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アリスはくじけない!  作者: 青木紅葉
第三章・立て直すぞ! 群狼戦士団!

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 リチャードについて行くと、彼は二つ隣の部屋に入った。


 先程の部屋に比べると、椅子とテーブルのみの簡素な応接室だ。


 賓客というよりは、ビーンズ家に近い者とかを通す部屋なのかもしれない。


 既にテーブルの上にはペンとメモが置かれているし、先に準備してからボクを呼びに来たんだろう。


 さて……それはともかくとして、隣の部屋も空いていそうなのに……敢えて一部屋開ける意味は何なんだろう?


「座りなさい」


 リチャードは上座に座ると、ボクにも座すようにと促す。


 先程に比べると少々雰囲気が和らいでいる気がするが……こっちが素なのかな?


 ともあれ、立っていても仕方がないし大人しく席に着いた。


「……この部屋にした意味は何かあるんですか?」


「大した意味はないな。強いて挙げるなら、聞き取りの後にする話はまずは君からにするべきだと思ったからだ」


「……はぁ」


 どういうことだろうと首を傾げていると、リチャードは「始めようか」と言って、ペンに手を伸ばした。


 ◇


 ボクの大して面白みのないただの報告を、リチャードは真面目に聞いてメモしているが、そのメモのついでにあのオオカミの群れについて話をしてくれた。


 あの草原はこのラカンパの街だけじゃなくて、複数の街や村とも接している広い草原らしい。


 多くの生物も生息していて、あのオオカミの群れはその中の一つなんだと。


 ただ、例年は各街や村に群狼戦士団が顔を出して、補給のついでに周辺の見回りをすることで、人里との境界線をわからせていたそうだ。


 そのため、普段は人里どころかある程度武装している人間には近づこうともしないらしい。


 アレは大分イレギュラーな事態だったんだろう。


 野営地が襲撃された時も、団員は近隣の街や村の周辺の見回りに出ていたが、途中で終わってしまったことが理由かもしれない。


「街に運ばれた物を見たが、比較的小さいサイズのオオカミばかりだったし、アレで全てということはないはずだ。恐らく群れの偵察隊か何かだろう。今回引き返してこなかったことで、少なくともこの街や周辺の人里に手を出すことはないはずだ。良くやってくれた」


「……ありがとうございます」


 群狼戦士団が健在なら起きなかったことかもしれないし、素直に受け止めていい物なのかどうかはわからないが……とりあえずボクはそう返した。


 それで良かったのか、リチャードは「うむ」と満足そうに頷いている。


 だが、ペンを置くと急に表情が真面目なものに変わった。


 その変わり様に「……なんですか?」と訊ねると、リチャードは一拍おいて「群狼戦士団についてだ」と話し始めた。


「君から報告を受けてひと月ほど、襲撃地点の野営地はもちろん、周辺の街道も含めて調査を行っていたが……群狼戦士団の団員と思しき遺体を多数発見した」


「……ええ」


「動じていないな。覚悟は出来ていたか」


「まぁ……実際にやられているところを見ていますしね。ひと月経っても姿を見せなかったですし……」


「だが、グレイを始めとした幹部格の遺体はまだ見つけられていない。どこかに身を潜めている可能性はある」


「あら? ……それなら村に使いくらい出してくれてもいいのに」


 あの村にだって定期的に立ち寄っていたみたいだし、ビーンズ家のことは知っているんだろう。


 あそこに身を寄せて立て直すって考えはなかったのかな?


「我々もそうだが、未だに賊の狙いがわかっていない。身を潜めているのなら尚更だろう」


「それはあるかもしれませんね……」


 一応アレはエリーゼ様を狙ってのことだとは思うが、そのエリーゼ様を狙った理由ってのが、どうも未だに判明していないらしい。


 狙われた本人ですらわかっていないのなら、身を潜めている状況ではどうしようもないだろう。


 それにしても……幹部格か。


 生まれてずっと一緒にいたが、実はボクは昼間は引き籠っていたし、夜くらいしか大人の側に近づかなかったから、幹部格どころか大半の団員のことを知らないんだよな。

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