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村に戻ったボクは今度こそ屋敷に向かった。
毎晩のことだし、こちらの使用人はもう慣れたもので、エスカレーターのようにそのままジョンの下に案内された。
そこで、外のオオカミの様子を伝えてから、書庫の鍵を受け取ってからそちらに向かうことにした。
ここ最近書庫には先にジェイクがいることもあったんだが、今日は彼はジョンから仕事を申し付けられているようで、ボクだけになりそうだ。
別にジェイクと話すわけでもないし、彼がいないのならそれはそれで自分の勉強に専念出来るから悪くない。
書庫に入ると、壁や本棚に明かりを点けて行きながら奥の部屋に向かった。
ここ最近は魔物や森について書かれた資料に目を通しているんだが、今日は違う。
「……さてさて? 魔獣とか動物の名前の付け方とか法則なんて資料にあるのかな?」
まずはこちらの部屋に保管されている資料を調べることにした。
オオカミに相応しい名前なんて前世を含めてもボクの知識にはないが、魔獣という特殊な立場を考慮すると、何となくカッコいい名前……とかで付けるのは止めた方がいいらしいのは、昼間の街の屋敷のやり取りで理解した。
「ただのイヌとかネコとか……ペットだったら大丈夫なんだろうけど、従魔ってシステムはちゃんと公的に記録されるみたいだしね。男爵家ってのがどれくらいの力なのかはわからないけれど、もっと偉い人たちを想定しないといけないみたいだし……」
魔物も魔獣も知らないことばかりだし、あんまりチャレンジするような真似は避けておいた方がいいだろう。
そのためにも、資料を探しているんだが……。
「こっちには無いのかな? そんなに専門的なことじゃないからかな?」
魔物に関する資料をもっとしっかり読み込めば、もしかしたら何か記されているかもしれないが……とりあえずタイトルからだと見つけられなかった。
まぁ……基本的にこの奥の部屋にある本は魔物や森の情報が多めだし、そもそも置いていないのかもしれない。
むしろ動物の名前や名付け方とかなら、手前の誰でも見れる方に置いている可能性が高い気がする。
とりあえず、あっちの本棚も調べてみよう。
◇
書庫内の手前の部屋で本棚から適当な本を見つけては、パラパラと流し読んでいたが、残念ながら今のところ欲しい情報は得られていない。
もっとも、こちらの蔵書量は奥の部屋よりもずっと多いし、まだまだ手を付けられていない本棚はたくさんある。
何か参考になる本の一冊や二冊くらいは見つかるだろうと、ウロウロしているんだが……一人じゃ大変だ。
使用人に手伝いを求めるってのは有りだろうか……などと考えていると、ドアをノックする音と共に「入りますよ」と声がした。
「うん? ……エリーゼ様? どうぞ」
その声でドアが開けられると、外からエリーゼ様が入って来た。
寝巻……とまでは言わないが、飾りっ気のない無地の地味なワンピース姿で上から肩掛けを羽織っている。
随分と無防備な恰好だが……彼女一人で来たんだろうか?
ボクが閉められたドアにまだ視線を向けていることに気付いたのか、エリーゼ様が「私だけですよ」と答えた。
「アリスさんが村長に街の様子等の報告をした際に、夜にまた来ると伝えていたでしょう? 私にもそれが伝えられたので、もしアリスさんがこちらに来たら教えるようにお願いしていたんですよ」
「あぁ……なるほど」
昼……というより夕方かな?
拠点でのオオカミの件も含めて屋敷に報告に来た時は、エリーゼ様はまだ仕事で集会所にいて話が出来なかったんだ。
どの道翌朝の訓練で顔を合わせるから、その時に話せばいいかと後回しにしていたんだが……彼女の方からやって来たのか。
わざわざ使用人に頼んでまでボクに会いに来るだなんて……何か用事でもあるんだろうか?
……オオカミが目当てかな?




