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「ボクの髪が目立つ……ってことはよくわかったけど、皆は一体こんな所で何をしてるの? 揉めているような声じゃないのはわかったけど……」
塀の上から飛び降りると、彼らの下に歩いて行く。
彼らは割と自由にしてはいるが……それでも懲罰中の身だ。
将来的にはともかく、今はまだ彼らにお酒を飲む許可は出していないし、素面で暴れるようなこともないだろう。
何を騒いでいたんだろう?
「そんなに騒いでいたつもりはなかったんだが……中まで聞こえていたか」
一人がバツが悪そうに頭を掻いている。
「村が静かだからってのもあるからね。それで……おや?」
周囲の様子を観察しながら彼らの下に歩いて行くと、さらに離れた場所で篝火とは別に何かが燃えているのがわかった。
誰かが地面で何かを焼いているみたいだが……アレはカイルか?
ボクがそちらを見ていると、傭兵の一人が笑いながら話し始めた。
「アンタのオオカミが獲物を仕留めて来たんだよ。まあまあデカいシカだった」
「ほぅ!? 御飯ちゃんと食べたんだね?」
「ああ。腹の一部……肝臓だな。そこと前足と背中の一部をしっかり食っていたぜ」
「フラっと小屋を出て行ったかと思うと、仕留めて戻って来たからな。大したもんだ」
「それは良かった……」
大丈夫だろうとは思っていたが、こうやってちゃんと食事をしたと言うことを聞いて心配事が一つ解消したことで、ボクはホッと胸を撫で下ろした。
「それで、大部分が残っていたしどうしたもんかって話になったんだが……アイツが篝火の一つにぶつけるように置いて行ったんだよ。代わりに焼けってことなんだろうな」
傭兵がオオカミの小屋を指した。
どうやら今は小屋の中で休んでいるみたいだ。
ちょっと覗いて行ってもいいが……折角休んでいるのに邪魔しちゃ悪いか。
何の音も聞こえてこない小屋の方を眺めていると、「アリス団長」とカイルがやって来た。
「おや、カイル。獲物の処理をしてくれてたんだね? もう終わったの?」
先程まで彼がいた場所を見ると、既に火が消えていた。
薄っすら煙が立ち上っているように見えるが、処理は完了しているみたいだ。
「悠長に外で焼いておくわけにもいかないだろう? 一気に高火力で焼き切った。骨はまだあそこに残ってはいるが……それ以外は灰になっている。朝になったら骨だけ適当なところに捨てておく」
「そうだね……お願いするよ。それで、結局皆は何で盛り上がってたの?」
そこが未だにわからないため訊ねると、カイルは苦笑しながら肩を竦めている。
「団長が村に戻ってから、オオカミの様子をアイツらも気にしていたんだ。獲物を狩って来て……さらに処理を俺たちに任せたことがおかしかったんじゃないか? そう窮屈な環境ってわけではないが……丁度いい娯楽なんだろう」
「なるほど……娯楽ね」
窮屈って程ではないが、村の外で傭兵と監視役のカイルとヨーゼフが一緒っていう、碌に息抜きも出来ない環境だしな。
アニマルセラピー……とまではいかなくても、それに近い効果でもあったのかもしれない。
「初めは皆警戒していたのに、たった半日そこらで随分打ち解けたみたいだね。まぁ……そっちの方がずっといいかな」
「そうだな。オオカミの方も少なくとも、我々を敵だとは思っていないようだし……上手くやっていけそうだな」
「それは良かった。それならボクは村に戻るけど……」
小屋のすぐ側で、大声ではないが傭兵たちが集まって談笑を続けている。
ボクの視線に気付いたカイルが、「わかっている」と頷く。
「あまり騒がしくなるようなら俺の方で黙らせておこう。見張りにも戻らせるから安心してくれ」
「それなら大丈夫だね。後はお願いするよ」
ボクがアレコレ言うよりも、カイルたちに任せる方がずっと上手くいくだろう。
改めて拠点のことを頼むと、ボクは村の中に戻ることにした。




