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「この辺は……何か出るっけ?」
森の中を歩きながら、一緒について来ている二人に話しかけた。
森のすぐ手前に拠点を構えている彼らは、これまでにも何度も森の魔物や獣と戦闘を行っていた。
ボクも参加したことはあるが、基本的に軽く顔を見せに来る程度でしかないため、本当に数度だけでほとんどこちらの様子は把握出来ていない。
一応毎晩カイルやヨーゼフの報告書には目を通しているが、やはり現場を直接見ないとわからないこともある。
「この辺りだと、魔物で言ったらゴブリン辺りだな。もっとも、巣は見つけられていないし川を渡っている様子もないから、森の東西のどっちかにいるのがこちら側まで遠征して来ている……ってところだろう」
「デカい魔物の群れを率いるようなボスはいないと思うぜ? 後は……獣だな。イノシシ、シカ、オオカミ……デカいのはこの辺りで、ウサギやキツネなんかの小さなのも見かけた。俺たちが使っている池や村の水源になっている池の他にも、川や池があるし……動物は多いな」
「……普通の森みたいだね。まぁ、そうじゃなかったら村をすぐ側に構えないかな?」
二人の話を纏めると、とりあえずこの森は動物も植物も……水も豊富で、自然豊かなこの国のどこにでもある森って感じかな?
今更ボクが森を気にしていることが不思議なのか、彼らは「何かあるのか?」と訊ねて来た。
「うーん……どうもこのコ、自分で獲った獲物しか食べないみたいなんだよね。このコが獲れる動物がちゃんといるし、ボクたちが使う以外の水源もあるから大丈夫だよね?」
「……森に放すのか?」
「うん。代官さんからも騎士団からもビーンズ家の当主からも許可を得ているよ。ジョンさんにも報告は行ってるはずだし……もうそれは決定だからね?」
二人は揃って「おお……」と呻き声を上げた。
「うん?」
喋りながら歩いていると、オオカミがピタッと足を止めた。
前の方を気にしているみたいだが……ただ森が広がっているだけで何かがいるわけでもなければ、怪しい物が転がっているわけでもない……はずだ。
「どうかしたのかな?」
「わからん。少なくともこの辺りで何かがあったりは……してないよな?」
「ああ。何度か見回りでは来たことがあるが、特に何かと戦ったりもしていないし……」
オオカミが何を見つけたのかがわからず、ボクたちもキョロキョロと周囲を警戒するが……特に何も見つからない。
「何もないよね。……向こうは何があるかわかる?」
オオカミの視線の先には森が広がっているだけだが、ボクたちが見える範囲の先には何かがあるのかもしれない。
前を向いたまま足を止めているオオカミを横目に、このさらに奥に何があるかを傭兵たちに訊ねた。
「この先か……? まあ……川は流れているよな」
「そうだな。だが、その先まではわからない。俺たちも川沿いを見てはいるが……向こう岸に何かあれば気付くんだがな……行ってみるか?」
「まだ日が落ちるには早いし、いっそカイルたちも呼んで来てもいいぞ?」
「そうだね……」
ボクは彼らの言葉に返事を迷いながら、オオカミをジッと見る。
相変わらず前を向いたままだが、唸り声を上げたり体勢を変えたり……何かを警戒しているようには見えない。
少々強めに魔力を込めながら「どうかしたの?」とオオカミに訊ねると、数秒ほどは変わらずジッと前を向いたままだったが、もういいのかボクの足元に戻って来た。
「どういうことだ?」
「わかんない。何かを見つけたのかもしれないけど……緊急事態ってわけじゃないのかもね」
「引き返すか?」
随分慎重だが、彼らは軽装だし無理もないか。
だからと言って、別にボクたちの目的は狩りじゃない。
行動範囲をオオカミに伝えるためだ。
「いや……このまま続けよう。またもう一度足を止めたりしたら、その時は引き返すよ」
何かあったわけでもないし、これでいいよな?




