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オオカミ用の小屋は、拠点の端に設置されていた。
他の小屋から距離があるし、面倒を見る気も……監視をする気もなさそうな場所だ。
オオカミに勝手にさせようって意志を感じるな。
コレは誰が決めたんだろうか?
そう訊ねると、カイルが肩を竦めながら口を開いた。
「場所は俺が勝手に決めてしまったが……ココで構わないな?」
決めたのはカイルか。
まぁ、妥当なところだろうし、ボクからは何もない。
「うん。まぁ……いいんじゃないかな? そこに何か線を引いてるけど、杭でも打つの?」
周囲を見てみると、小屋を数メートル離れたところにラインが引かれているのがわかった。
設置場所の目印……というには広すぎるし、何か別の目的があるように見える。
オオカミを囲おうとでも考えたのかな?
「わからなくはないけど……意味はあるのかな?」
「まあ、そうだな。実際に見てから決めようとは思っていたが、ある程度出入りを制限出来たら……とな。もっとも、そのオオカミには無意味だろうし、下手に張って壊されても補修の手間がかかるだけだからな。何もしなくていいよな」
「わざわざ壊したりはしないと思うけど、この拠点を囲っている柵程度じゃ足止めは出来ないと思うよ。中に入るね」
お喋りをしながら歩いていると、小屋のドアの前に到着した。
ボクは一言断ってから、オオカミと一緒に中に入る。
小屋のドアは押戸で、サイズこそ人間用のドアと大差はないが、中と外のどちらからでも開閉出来るようになっている。
通常のドアに比べると少々薄く出来ているようで、何割か軽く感じる。
これならオオカミも頭で開けるだろうし、簡単に出入り出来るだろう。
「結構広いね……壁も床も思った以上にしっかりしてるし、これならゆっくり出来るかな?」
中は外から見たよりも広く感じる。
大体……縦横二メートルってところだろうか?
屋根はまだ出来ていないが、それでも圧迫感を感じるようなことはない。
床や壁を圧してみてもビクともしないし、中に貰って来た道具を色々置いても崩れるようなことはないだろう。
「どうかな?」
気に入ったかどうかを訊ねると、オオカミは短くひと吠えした。
どうやら気に入ったみたいだ。
「大丈夫みたいだね……」
その反応を見て一安心したボクは、小屋から出た。
「気に行ったみたいだよ。後は仕上げをお願い」
「わかった。後は屋根を取り付けるだけだし……すぐに終わるだろう。団長はどうする? 手伝うか?」
「いや、ボクは森を一緒に見ててくるよ。……出来れば誰か一人か二人一緒について来て欲しいんだけど」
オオカミに森の中の案内と移動していい範囲を教える必要がある。
賢いし無理をするとは思わないが、それでもしっかりと言い聞かせておかないとな。
「……そうだな。移動範囲はどこまでにするつもりなんだ?」
「川の手前側までかな。誰かいない?」
先程は反応がなかったので、改めて彼らの方に顔を向けて訊ねるが……目を逸らしたり足元を見たりと、どうやら皆一緒に森に向かうのは遠慮したいようだ。
命令したら連れていけるんだろうが……流石にそんな真似はしたくないしな。
どうしようかな……と迷っていると、カイルが傭兵の中の若い二人に声をかけた。
あからさまに嫌そうな表情を浮かべるが……仕方がないと諦めたらしく、前に出て来た。
「俺たちが同行するが……装備はどうする?」
今の彼らは腰に剣を帯びているが、それだけだ。
本格的に森の探索をするのなら不十分だが。
「軽く見て回るだけだし、それで問題ないよ。もし魔物が出たらボクとこの子で片付けるからね」
槍を掲げながら、彼らは戦う必要はないと伝えたんだが……そういう問題じゃないらしい。
「わかった。……諦めようぜ?」
「そうだな」
二人は顔を見合わせると、そう言って溜め息を吐いていた。




