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裏の拠点に到着すると、傭兵たちはもちろんだがカイルまで揃っていた。
拠点を手掛けている間は皆で集まって作業を行っていたが、ある程度形になって来たところで、また二手に分かれて辺りの警戒や調査を行っていたんだが……今日は違うらしい。
皆で集まってオオカミ用の小屋を建てていた。
大の大人が十何人も揃っているだけあって、小屋の中身である檻は既に完成していて、今は板の打ち付け作業を行っている。
こうやって見るとちょっとした物置くらいの大きさがあるし、中々立派なもんだ。
「……団長? おいっ! 来たぞ!」
拠点に近付くボクたちに気付いた一人が周囲にそれを伝えると、作業の手を止めて一斉にこちらを見た。
話を聞いているからなのかオオカミを見ても臨戦態勢に入ったりはしないが……それでも、少々怯んだ様子を見せている。
村に戻って来るまでの間、結局ほとんどの期間を街道じゃなくて草原を走っていたが……それで正解だったみたいだな。
こちらに近付くことを躊躇う傭兵を見て、そんなことを考えていると、カイルが傭兵たちを割って前に出て来た。
「そのオオカミだな。…………かなり強いな。小屋は既に組み立てているが、大丈夫なのか?」
カイルは流石に腰の剣に手を伸ばしたりはしないが、それでもオオカミから目を離そうとはしない。
魔物や魔獣としての枠組みだとそこまで強力ってわけではないが、それでも魔獣単体で見たら、カイルレベルでも十分強力なんだろう。
「賢い良い子だよ。言うこともちゃんと聞くしね……小屋を見せてもらっても?」
「ああ。中や周囲の板は既に打ち付け終えているし後は屋根だけだ。見てもらっても問題はない」
カイルは「ついて来い」と言って、小屋の方に歩いて行く。
ボクたちもついて行くが……その少し後ろを傭兵たちがゾロゾロとついて来た。
オオカミに近付くのは怖いみたいだが、興味自体はあるようだ。
歩きながらオオカミが振り返ると、「うおおっ!?」と叫びながら後ずさったりしているあたり、慣れるのには時間がかかるかもしれない。
「……大丈夫だよ? 街のお屋敷でも大人しくしてたからね?」
そこまで怯える必要はないんだよ……と言ってはみたものの、そう簡単なことではないらしい。
「お……おお。つってもなぁ……そこらの雑魚とはわけが違うだろう?」
その彼の言葉に、周りの傭兵たちも頷いている。
「肉食の魔獣は牙や爪や……当たれば一発でひっくり返して来るからな。出来ればまともに相手をしたくない相手なんだ」
「俺が居たところじゃ、馬車を盾に迎え撃つのが定番だったな」
彼らの実に実感のこもった言葉に、周囲の傭兵たちから「俺のところもだ」「俺もそう教わったぞ」と同意の声が上がる。
「なるほどねぇ……」
そういえばあれが何かだったのかは聞き忘れていたが、今日街の側で戦った大型の魔物は、体格や腕力で並の人間を圧倒しているし、人間なら一撃で仕留められそうだが、小型のゴブリン辺りだと、油断さえしなければ一撃でやられるってことはないと思う。
ただ魔獣はどうなんだろうな。
ボクが知ってる魔獣はオオカミと以前倒したイノシシだけだが……彼らが言うように一手で並の人間を倒せるだけの力は十分あるだろう。
彼らは傭兵として長く活動しているし、そう簡単に魔獣相手に警戒を解けないのも無理はないのかもしれない。
……ボクはこのオオカミと初めて会った時から恐怖を感じたことはなかったんだが、何でだろう。
見た目の迫力は感じていたし、今日街でマントを首に巻くときはちょっとドキドキしたが、それくらいだった。
ボクは別に前世でも今生でも動物が特別得意とかそんなことはないんだが……何か余程相性でもいいんだろうか?
よくわからないな。
ボクは首を傾げながら、黙って横を歩いているオオカミを眺めていた。




