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先程の荷馬車のおじさんと別れてから、再び村に向かって走り始めた。
昼を過ぎてはいるが日が落ちるにはまだまだ……という時間が影響しているのかはわからないが、あれから二組のラカンパの街を目指している者たちとすれ違った。
一組目は徒歩で街を目指している五人組の若い男女だった。
手製の槍に厚手のベスト……と武装っぽいことはしていたが、ボクでもわかるくらい素人感満載だった。
先程のおじさん同様に「こんにちわ」と声をかけると、向こうも先頭の一人だけではあるが挨拶を返しては来たんだが、声は上ずっていたし随分緊張していた。
ただ、ボクに対してってよりは、外を出歩くことに対してみたいだ。
先頭がボクに挨拶をしている間も、忙しなくそこら中に視線を這わせていたし、もしかしたら初めての外へのお使いとかなのかもしれない。
出稼ぎの下見か、あるいは社会見学か。
何にせよ、余計な真似をして彼らの緊張度合いを悪化させるのも悪いからと、ボクの方から足早に遠ざかって行った。
二組目は護衛付きの馬車だった。
御者も護衛もすれ違う際に緊張したような、ボクが何者なのかをわかっているような素振りだったし、声をかけたりはせずに街道の端によってやり過ごした。
馬車には家紋は見当たらなかったが、装飾も施されていたし……中々安くない造りだった。
爵位持ちかまではわからないが、貴族が乗っている馬車だったのかもしれない。
ボクも一応は男爵家の端くれではあるが、真っ当な教育も躾けも受けていないし、何かやらかす可能性もゼロじゃないため、これまたさっさと離れることにした。
街道で擦れ違うだけだっていうのに、色々考えさせられてしまう。
ちなみに、オオカミはその間草原に身を伏せて気配を殺していた。
一組目はともかく二組目の護衛は中々腕が良さそうだったのに、全く気が付いた様子はなかったし、大したもんだと感心していたんだが……このオオカミがそれを出来るってことは、他の魔物や魔獣だって似たようなことが出来るのかもしれない。
今後は何の気配も感じないからといって、気を抜いたりしないように気を付けないとな。
確実を期するには直視するしかないのかもな。
ともあれ、その二組と揉めることもなくやり過ごした後は、誰とも出会うことなく無事村へと辿り着いた。
◇
「アリス団長! お帰りなさい」
村の門の前に到着すると、警備員たちが笑顔で挨拶をしてきた。
すぐ隣にはオオカミを普通に連れて来ているのに、それでも全く動じた様子はない。
「そのオオカミですね? ご当主様やリチャード様からアリス団長が従えた魔獣と共に帰還すると報告があったんです。村全体にはまだ話していませんが……警備や農場に出る者たちには伝えられていますよ」
興味深そうにオオカミに視線を向けながら、村の状況を話してくれた。
先にこちらに荷物などを運んでいた者は、随分しっかり報告をしてくれていたらしい。
これならオオカミを裏の拠点で一緒に連れていくことに反対はされなさそうだ。
祖父たちに感謝だ。
「荷物はもう届いているんですよね?」
「ええ。詳しい中身までは知りませんが、飼育小屋みたいなものは裏にもう運んでいます」
「それなら話は早いね。ボクは一先ずこのコと拠点に向かいます。アリスが帰って来たってことだけ伝えておいてもらえますか?」
「わかりました。……街から届けられた荷物の大半は屋敷に置いていますが、どうしますか?」
「うん? うーん……必要なら自分で取りに来るからそのままで構いません」
ブラシや爪切りなんかだろうし、とりあえず今は必要ない物ばかりだ。
それよりも、小屋がどうなっているかと、森の案内をやってしまいたい。
ボクは警備の彼らに村への伝言を頼むと、イソイソと裏の拠点にオオカミと共に向かった。




