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街道に出てから走り出して少し経った頃、再びオオカミが草原に逸れて行った。
「……ん? 人かな?」
何事かと思ったが、そのまま走っているし……前から人でも来たんだろうか?
気になりつつもボクは速度を維持したまま走っていると、こちらに向かって走って来る荷馬車が見えて来た。
村の馬車でもなさそうだし、一つか二つ先の村からだろうか?
速度が出せていないみたいだが、積み荷があるからなのかもしれない。
村の特産品か何かを街に売りに来た……ってところかな。
「気付いたみたいだね」
向こうも気付いたようで、御者が御者台の上に立ち上がってこちらを確認しようとしている。
とりあえず、武器を持っている上に顔も隠しているし……警戒させないように軽い駆け足程度にまで速度を落としていく。
横を見ると、オオカミもボクに合わせて速度を落としているし、上手く草原に身を隠せている。
これなら近付いても驚かせるようなことはないだろう。
そのまま走っていると、馬車がもう目の前にまでやって来ていた。
「こんにちわ!」
ボクは目立つ恰好をしているし、無視して通り過ぎるのもなんだから、一先ず足を止めて挨拶をすることにした。
前世の登山じゃあるまいし、別にそんな必要はないのかもしれないが……この世界の街道でのマナーってどうなっているんだろうな?
怪しまれたりはしないと思うが……。
「あっ……ああ、こんにちわ。街からの帰りかい?」
改めて目の前でボクの姿を見た御者のおじさんは、急に声をかけられて驚いたようだったが、それでも声ですぐに若い……というよりは幼い女性だってことがわかったんだろう。
すぐに笑顔を見せた。
「最近魔物や獣が森の側で見かけたって話を聞くんだが、お嬢ちゃんが一人で出歩けるのなら今日はこの辺は大丈夫みたいだね」
ボクは村の周辺くらいしか知らなかったが……どうやら別の場所でも魔物がちょこちょこ姿を見せるようになっているらしい。
この言い方だと襲われたり被害は出ていないみたいだから、わざわざ騎士団には報告していないのかもしれないな。
それよりも。
「片付きはしましたけど、街の南門の方で魔物が出ましたよ」
「ええっ!?」
「もう全部倒していますし、ここに来るまでも魔物や獣に遭遇しなかったから大丈夫だとは思いますけど、一応気を付けた方がいいと思います」
「そうかー……わかったよ」
一先ず既に倒し終えているってことにホッとしたようだったが、それでも街のすぐ側でも魔物が出て、さらに騎士団と戦闘になったということにショックを受けているようだった。
「今は大丈夫なんだね? 今のうちに急いで向かった方がよさそうだね。……お嬢ちゃんはどこに行くんだい? 武器を持っているし、大丈夫だから一人で移動しているんだろうけれど……」
「ビーンズ村……で伝わりますか? すぐそこまでですよ」
その言葉に、おじさんは「ああっ!」と手を打った。
「わかるよ。そういえばあそこは群狼戦士団の拠点の一つだったね。……お嬢ちゃんも一員なのかな?」
「えっ? ええ……まぁ、そうですね」
あまり噂には強くないのか、群狼戦士団が一旦崩壊したことは知らないみたいだが、それでもビーンズ村と群狼戦士団との関係は多少は知っているようだ。
ボクの全身を見ては感心したように頷いている。
ボソッと「小さいのにねぇ……」と呟いていたが、それは聞こえなかったことにしてあげよう。
「まあ……それなら一人でも大丈夫だね。それじゃあ、危ないのはおじさんか」
そう言うと、彼は荷馬車を出発させた。
通り過ぎる際に荷台が見えたが、麻袋が入った大量の木箱が積み込まれている。
中身は……野菜か野草かな?
見た目だけなら重そうだけれど、実際はそこまでじゃないのかもしれない。
バランスを崩さないようにゆっくり走っているだけで、いざとなれば速度は出せるのかもしれない。
そんなことを考えながら、ゆっくり遠ざかって行く荷馬車を見ていた。




