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「…………魔獣っ!?」
コソコソと人が通らないであろう路地を選びながら南門までやって来ると、ボクたちに……というよりも、オオカミに気付いた門前の兵が槍を構える。
ボクも一緒にいるんだが、どうしてもボクよりもオオカミの方に目が行ってしまうのか、ボクは無視されている。
とりあえず。
「待って! 首元を見て下さいね!!」
オオカミと並んで歩いていたんだが、そこから数歩分前に飛び出ると、集まりだした兵たちに向かって声を上げる。
そこでようやくボクにも気づいたようで、「アリス団長っ!?」と驚かれてしまった。
我ながらインパクトがある見た目をしているつもりだったんだが……まだまだだったか。
ともあれ、ボクを知っているのなら話が早い。
「今日街の外で魔物との戦闘があったでしょう? その時一緒に戦ったんです。それで、このコはボクが面倒を見ることになりました。首輪があるでしょう? 代官のゴードン男爵とそちらの団長さんからも承認されています」
それで伝わったようで、彼らは「ああ……」とホッとした表情で武器を下した。
「失礼しました。まだ本部からの通達が届いていなかったようです」
「うん。まだ決まったばかりですからね。言うことをよく聞く大人しいコなので、もし誰かに聞かれたらそう伝えて下さいね」
騎士団内の伝達方法がどうなっているのかはわからないが、ボクがオオカミと契約を結んでからまだ二時間かそこらしか経っていないし、詰所から離れた場所で警備の任務に就いている兵たちにまでは伝えられないだろう。
しかも、ボクが今まで一度も利用したことがない門だ。
通達が遅れていても仕方がない。
「これから村に帰ろうと思っているんですけど、門を通っても構いませんか?」
ボクの言葉に、彼らは笑顔で「もちろんです」と答えると、門の両脇に整列した。
「アレ以降魔物が出たという報告は届いておりませんし、ビーンズ村まで距離もありませんが……お気をつけて」
「ええ。ありがとうございます」
そして、見送る彼らに返事をしながらボクとオオカミは門を通って外に出た。
◇
南門は東西の門と違って街道に繋がっているわけではなく、すぐ側の森で働く者たち用の門で、造りはシンプル……というか地味だ。
その分、先程のように森から出て来る魔物に備えるために、頑丈に作られているし、地味な門の代わりに街壁が見張りの櫓も兼ねた造りになっていて、壁の上に見張りの兵を配置出来るようで、門から出たボクたちを壁の上から見送っている。
見送っている……というよりも。
「監視してるのかな? ああは言ってたけど、このコも……ボクのことも警戒してるのかもね」
視線を感じた際に一度軽く振り返ってみたが、武器を構えたままボクたちをジッと見ていた。
ボクは身元こそ一応ハッキリしているが、ビジュアルも含めて怪しい人間……というか、謎の人間であることに間違いはない。
いくら街の有力一族の人間だからって、それだけで街を守る兵が信用する……ってわけにもいかないだろう。
「それくらいやってくれる方が頼もしいけどね」
手でも振ろうかな……と一瞬考えたが、敢えて刺激する必要もないだろうし、ボクはそのまま振り返ることなく街から離れていった。
そして、街壁の上の兵が見えなくなるくらい街から離れたところで、ボクたちは街道に草原から街道に入ることにした。
丁度街道を通る者が途切れていたし、オオカミと一緒に移動しても誰かに驚かれるようなこともなく、いいタイミングだった。
「さて……と、後は村に帰るだけだね。走るけど、周りの警戒も必要か」
森から魔物が出て来るってのは、農場が襲われた件もあって知ってはいたが、実際に今日目の当たりにしたことで、その厄介さをより強く理解出来た。
森への警戒を忘れずにしないとな。
ボクはオオカミにも森の警戒をお願いすると、村に向かって走り出した。




