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ボクは昼食を食べ終えてから、しばらくオオカミの様子見を続けていたが、やはり食べる素振りは見せなかった。
もしかしたらボクたちが一緒にいるからなのかな……とも思ったんだが、水だけは飲んでいたしそれも違うみたいだ。
祖父が言っていたように今はまだ食べる必要がなかったのかもしれない。
村に戻ってから、オオカミの様子に気を付けておこう。
「貴女、その剣はどうするの? 外の戦闘で使ったんでしょう? 工房に預けておいて、手入れが完了したら村に運ばせてもいいのよ?」
食堂を出て廊下を歩いていると、母が後ろから話しかけて来た。
ちなみに、祖父とおじいさんは仕事が詰まっているとかで、二人の秘書っぽい人に連れていかれてしまい、今は母と二人だ。
「そうですね……」
槍の手入れの間の予備武器……そのつもりで持って来ていたんだが、何だかんだで一戦やってしまっていた。
予備武器として持って来たんだから、活躍する場があって良かった……って話ではあるんだが、この剣は槍以上に特殊な武器だ。
ミスリルの純度が高く、普通の手入れじゃ刃はどうにかなっても魔力の回路までは手が届かないため、専門家に任せるしかない代物だ。
だが……。
「今日は何回か斬ったくらいで、ほとんど使ってませんからね。今度来た時にお願いするつもりです」
ボクは今日は止めに何度か斬ったり突き刺したりしたくらいだ。
まぁ……手入れはした方がいいんだろうが、それでもわざわざ預ける程ではない。
「そう。まあ……必要な場合は、村を訪れる商人にここに持って来させなさい」
「ええ。その時はお願いしますね」
人手が増えたとはいえ、一応ボクは村の警備の責任者だ。
急な思い付きで村を離れるのも無責任だし、いろんなルートがあるのはいいことだ。
街に来るタイミングが合わないようなら、そのルートを使ってみようかな……。
そんなことを考えながら、ボクはオオカミと共に歩いていたんだが。
「アリス? どこへ行くの?」と、玄関ホールを通過しかけたところで母に呼び止められた。
「そっちは裏口よ? ちゃんと玄関から出て行きなさい」
「……大丈夫なんですか?」
結局この敷地から出て行くところは見られるとはいえ、思い切り玄関からオオカミと一緒に出るのは、もし通りを歩く人に見られたらまずくないんだろうか?
ボクが首を傾げていると、母は「今更よ」と言い放ち、玄関に向かって歩いて行った。
◇
母は玄関ホールどころか、外の門まで見送りに出て来てくれた。
隣接する屋敷の警備員たちはボクが戻って来た際に一緒だったオオカミを見ているが、たまたま通りを歩いていた者たちは、驚いて悲鳴を上げそうになっていたんだが……母の姿を見て「大丈夫なのか……」とわかったらしく、距離を取ってはいたが騒ぎになるようなことはなかった。
わざわざ出て来てくれた母に感謝だ。
とはいえ、この様子だとさっさと街から出た方がよさそうだ。
「行こう。ボクから離れたらダメだよ?」
ボクの声に、オオカミは黙ったすぐ横に近づいて来た。
……リードでもあれば周りへの威圧感はいくらか和らぐんだろうか?
チラッと隣を歩くオオカミを見ると、ボクの胸の高さに頭があった。
ボクはあまり背が大きい方じゃないが……それでもこの大きなら何をしたって意味はないかな。
強いて挙げるなら、このオオカミの存在を認知されることと、街中を歩くことに慣れてもらうくらいかな。
短い時間だとはいえ街中を一緒に歩いたし、噂くらいにはなるだろうからそのうち広まるだろうが……今日は無理だろう。
「大通りを歩くと目立ち過ぎるね。ここから近いのは……南門かな? そこから出ちゃおうか」
街に入って来たのは西門だったが……あそこは商業区が近いしたくさんの人が歩いているし、あそこなら裏が森だから人の目も少ないはずだ。




