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しばらく玄関ホールでオオカミの道具に関して祖父とおじいさんが盛り上がっていたが……母が「そのくらいでいいでしょう」と話を終わらせて、使用人たちに道具を木箱に詰めさせてしまった。
祖父たちは名残惜しそうではあったが、先行して村に運んでもらう必要があるしここであまり時間を使うことは出来ないと、さらに母に言われて諦めていたんだが……動物好きなんだろうか?
そろって食事が出来る大きな食堂もあるが、今回はオオカミもいるから会議などに使われる大部屋に通された。
そこで、オオカミ用の食事も試すことになったんだが……。
「食べませんね?」
ボクたちと同じタイミングで大きく切り分けたブタの肉が運び込まれたんだが、それには全く手を付けていない。
一緒に用意された水もそうだ。
「食べるように指示は出しているんだな?」
「ええ。まぁ……そこまで強くは言ってないですけど……」
先程からオオカミに向かって、何度も「食事だよ」「食べても大丈夫だよ」「安全だよ」と指示を送っているし、その都度こちらに顔を向けているからちゃんと届いてはいるんだろうが、それでも食べようとはしない。
もっと強く命令っぽくしてみたらまた違う結果になるのかもしれないが、そこまでしていいものなんだろうか。
「痩せ細っているようにも見えないし、空腹ではないか……それか自分で仕留めた獲物以外は口にしたくないか。どちらかの可能性が高いな。よほど衰弱でもしているのならともかく、そうでないのなら無理に食べさせることもあるまい」
おじいさんはオオカミに視線を向けながら、自分の言葉に納得するように深く頷いている。
「栄養補助食品がどれくらい口に合うか……など確かめたかったのですが……そもそも食べようとしないのならどうしようもないですね」
「うむ。無理をさせる必要はないだろう。アリス、村に帰ったら数日間は森に放ったまま好きにさせてみるといい」
「その後、可能ならオオカミの食性や習性をこちらに届けて欲しい。定期的に街から村に物資を送らせているが、その者に報告書を渡してもらえば我々に届くだろう。出来るかな?」
「それは、まぁ……出来ますよ」
結局のところ、ココでアレコレ考えたところで、相手はオオカミだ。
人間ならまだしも、魔獣が実際にはどう動くかなんてわかるわけがない。
彼らが言うように、森に放ってからどう動くかを観察した方が確実だろう。
幸い、あの辺りには人の目もたくさんあるしな。
彼らにも協力してもらったら、オオカミの生態についてもわかってくるかも知れない。
「ある程度行動範囲は区切っておいた方がいいですよね? 森を一緒に歩いて、どの辺まで来ていいかを教えておきます」
「うむ。そうした方がいいだろう。あの森の奥は初期の開拓団はもちろん、グレイたちですらまだ踏み入れていないからな」
おじいさんが何やら気になることを口にしたが……ドアを叩く音でボクがそれを訊ねるタイミングを逃してしまった。
「む? 入りなさい」
おじいさんは「何事か?」といった表情を浮かべたがそれは一瞬のことで、すぐに表情を元に戻すとドアに向かってそう言った。
「失礼します。アリスお嬢様、工房に預けていた槍の手入れが完了しました。こちらにお持ちしてよろしいでしょうか?」
どうやら彼はあの槍の手入れが完了して工房から届けられたから、そのことを伝えに来てくれたみたいだ。
「あぁ……それは助かります。お願いします」
母の帰還の護衛と槍の手入れ。
ボクが街にやって来た目的はその二つなんだが、これでどちらも達成したことになるな。
ついでに、ボクの仕事着も仕立ててもらったし、それは先程の村への物資を運ぶ馬車に乗せてもらっている。
今頃はもう村に到着しているはずだ。
昼食を食べ終えたら、村に帰らさせてもらおうかな。




