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武器を下げて欲しいというボクの頼みに、祖父は「もっともだ」と苦笑している。
「見ろ。あの通りアリスに大人しく従っている。手放せとは言わんが……せめて武器を下げろ」
祖父の言葉に、警備の兵は嫌そうな表情ながらも渋々武器を下した。
「……はっ。ですが、あまり近づき過ぎないようにお願いします。我々が譲歩出来るのはそこまでです」
武器を下しはしたが、むしろオオカミへの警戒心を高めてしまったような気もするが……それは仕方がないか。
「ああ……わかっている。アリス、これでいいかな?」
「ええ。それでは……」
ボクはオオカミと共に祖父の前に出ていく。
オオカミの巨躯がハッキリと視界に入ることで、ホールを守っている警備員たちの警戒度はさらに高まって行くが、祖父はお構いなしにオオカミに近付いて行く。
先程の「あまり近づかないように……」ってのは何だったんだろうね?
その祖父を見て、警備員たちは慌てて「ジャック様っ!?」と声を上げるが。
「見たらわかるだろう? その気ならもう既に襲い掛かって来ている。大人しいものだ」
祖父は全く悪びれもせずにオオカミの前まで来ると、腰を曲げて顔の高さを合わせてジッと目を見ている。
「黒のオオカミか。悪くないな。許可がこれだけ簡単に下りたと言うことは、街にも騎士団にも被害報告が上がっていないからだろうし……拾い物だな」
そんなことを言いながら今度は傍らにしゃがみこんだりと、随分と魔獣に対して慣れた様子だ。
いくらこのオオカミが大人しく僕のいうことを聞いているからと言って、その気になればひと噛みで自分を殺せる相手……しかも魔獣にここまで無警戒でいられるんだろうか?
「ジャックさんは動物とか魔獣の飼育経験とかあるんですか? あちらの人たちに比べると、随分慣れた様子ですけど……」
「私自身はないが、七家は覚えているかな? あの中に小型の魔獣を屋敷の警備用として飼っている家があるんだ。他にも取引先で連れている方たちもいるからね。ビーンズ家の中では従魔を目にする機会は私が一番多いはずだ」
「なるほどー……」
「大人しい賢いオオカミだ。では、あちらに行こうか。この分なら自分で道具を選べるかもしれないな」
祖父は笑いながら、道具が広げられている場所に向かって歩いて行った。
◇
さて……オオカミの飼育や手入れ道具なんだが、まずはケージを試してみた。
警備員たちの手も借りて鉄棒だけで仮組して、その中に入るよう指示してみると何の抵抗もなく入って行ったし、木材で覆うことになるが問題なく使ってくれるだろう。
そして、ブラシや爪切りなどの手入れ道具に関しては……よくわからなかった。
臭いをかいだり突っついたりしていたが、どれも特に興味も示さなかったし実際に使ってみなければわからなそうだ。
祖父と一緒に「どうしたものか……」と悩んでいると、母と母に呼ばれたおじいさんが玄関ホールの二階に姿を現した。
一階に下りてくると、母は階段の側で足を止めたがおじいさんはこちらに歩いて来る。
警備員たちが慌てて間に入るが……お構いなしだ。
「その首輪が従魔の証か? 何の飾りっ気もないし……ゴードンのセンスか」
しばらくオオカミを眺めていたが、溜め息を吐いたかと思うと首輪についてダメ出しをしている。
ボクからしたらシンプルで邪魔にならないからいいんじゃないかと思うんだが……おじいさんにとっては違うらしい。
もっとも、オオカミ自体は問題なく受け入れている……というよりも、むしろ気に入っているくらいだ。
勝手に触れたりこそしていないが、割と遠慮なくジロジロと眺めている。
母の方に視線を送ると、首を横に振りながら肩を竦めている。
何を言いたいのかはよくわからないが……とりあえず、この分なら村に連れて行っても大丈夫そうな気がするな。




