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一通り手入れ道具を見終えたものの……結局のところこれらがあのオオカミに上手く扱えるかどうかはわからないままだった。
イヌやネコといった小型の動物や、家畜や馬ともまた明らかに別種だし、比較のしようがないからだ。
どれも物自体はいいのはわかるんだが……いざ使ってみたら全く使い物にならない可能性もある。
祖父も一緒に見て行くにつれてそれがわかったようで、何かを考えこんでいるのか口数が徐々に減って行った。
そして。
「直接確認しなければわからないか。仕方がない……アリス、そのオオカミを連れて来なさい」
「ん? ……えーと?」
祖父の言葉にボクはどうしようかと母に視線を向けると、彼女は無言で溜め息を吐いて首を横に振っている。
「おじい様には私から許可を取って来ます。アリス、構わないから連れて来なさい」
まぁ……一緒にいる時間は短いが、それでも意味もなく人を襲うような真似はしないことはわかっている。
二人が言うのなら屋敷内を連れ歩いても大丈夫かな?
大丈夫なんだろうと思いつつも、その指示の内容に気になることがあり返事を返せないでいると、母が「アリス?」とさらに。
「……わかりました」
ボクの様子が気になったのか、祖父が「何か気になることでもあるのかね?」と訊ねて来た。
「……ダニとか大丈夫ですか?」
あのオオカミがこれまでどんな生活を送っていたのかはわからないが、少なくとも野生の生物であることは間違いない。
保管庫に入れた段階でもう遅いのかもしれないが……何もしていない状態で屋敷の中を連れまわしていいんだろうか?
だが、ボクが懸念を口にすると、背後から祖父が「ああ……」と笑った。
「魔物には寄生虫は付かない。血には魔力が込められているから、よほど強力な魔虫でもなければ取りつくことは出来んよ」
言われてみれば、確かに薬品の素材にするくらい魔物の血や内臓には魔力が籠っていたりする。
思えば、物心ついて以来ボクもカやダニに悩まされた記憶はないし……あのオオカミなら大丈夫だろう。
「なるほど……それなら大丈夫ですね」
ボクはそう答えると、オオカミを迎えに保管庫に向かうことにした。
◇
ボクが戻って来たことが分かっていたようで、オオカミは保管庫に入る前に既にドアの前で待機していたらしい。
「大人しく待っていたみたいだね」
軽く保管庫を見回して様子を確認するが、暴れたりいたずらをした跡は全く見当たらない。
「向こうで人が呼んでいるんだ。一緒に行こうね」
オオカミはボクの声に一声吠えて応えると、大人しく保管庫から廊下へと出て来た。
玄関ホールに向かって歩いて行くが、ボクの少し後ろを大人しくついて来る。
特に周りを気にする様子もないし、保管庫に入った時と同様でここは安全な場所だと思っているみたいで、すっかりリラックスしている。
「でも……使用人さんたちは違うみたいだね」
廊下の先に使用人がいるが、強張った表情でオオカミに視線を向けている。
まぁ……魔獣とかそんなこと関係なしに、相当大きな体をしているオオカミが、ノソノソと歩いて来ているんだ。
普通だったら逃げ出したっておかしくないだろう。
それでも堪えている辺り……プロだな。
彼らに「大丈夫ですよー」と伝えながら廊下を歩き、玄関ホールに到着した。
「おや? たくさん……」
先程までは、ホールに二人ほどしかいなかった警備員が、今は……全部で六人もいる。
二人は玄関の扉の両脇に立ち、もう二人は階段を防ぐように立っている。
そして、残りの二人は祖父の前に立ち塞がっている。
オオカミを連れて来たのは祖父の要求なんだが……周りの人間からしたらそんなことは関係ないんだろうな。
だが。
「ジャックさん、武器を下げさせてくれませんか? いくら大人しい子だからって武器を向けられたらどうなるかわかりませんよ?」
これくらいは言わせてもらわないとな。




