237
搬入口から中に入ると、そこは保管庫も兼ねているようでちょっとした倉庫みたいになっていた。
お酒が入っている大きな樽や、大きな木箱に棚がそこら中に並んでいるが、移動の邪魔になるほどではない。
「このすぐ隣の部屋が厨房よ」
母は保管庫の中を歩きながら、ここが屋敷の中のどの辺りに位置するかの説明をしてくれた。
端っこではなくて比較的中央に近い位置なのを不思議に思っていたんだが、厨房や使用人の待機室や他の物置部屋が並んでいるらしい。
村と違って、別に倉庫を建てられるほどの敷地はないし、一纏めにしちゃう方が管理もしやすいもんな。
「ここで待たせられるわね?」
母はドアに手をかけながらボクとオオカミを見る。
ちなみにオオカミは、ここに入った当初はキョロキョロと室内の様子を探っていたが、安全だと分かったようで大人しく座っている。
これなら、ここで待たせていても大丈夫そうだが……。
「ここで大人しく待っていてくれるかな?」
その言葉を聞いたオオカミは初めはボクの顔を見ていたが、すぐに部屋の隅の空いた場所に移動すると、床に伏せて目を閉じた。
「大丈夫みたいですね」
「そうね。まあ……時間はかからないはずだから安心しなさい。行くわよ」
そう言って母は部屋を出て行った。
その後をボクも追おうとしたが、部屋を出る前にもう一度オオカミに視線を向けると、目を閉じたまま尻尾を一度だけ振っていた。
意思の疎通は十分だな……と一安心したボクは、母の後を追って部屋を出て行った。
◇
部屋から出たボクは母の後ろ歩いて行くが、どうやら母は玄関ホールに向かっているらしい。
屋敷のどこかの大部屋に通されるのかと思ったが……違ったか。
「玄関ホールなんですね?」
「ええ。用意した品は村に持って行くのよ? 中に運び込んだらまた外まで運び直さないといけないでしょう?」
「それは確かに」
どれくらいの量の荷物なのかはわからないが、わざわざ運び直すのは面倒だ。
「そんなにたくさんあるんですか? ボク一人で持てるかな……」
「村と貴女たちと……オオカミの分よ。オオカミの分を急遽追加したからもう少し時間がかかると思ったけれど、早かったわね。荷物はお父様が従業員に馬車を用意させているから、それで運ばせるの。安心しなさい」
「あぁ……それは助かります」
母とそんなことを話していると、あっという間に玄関ホールに到着した。
祖父が屋敷の使用人に指示を出して、荷物を広げさせているが……何か多くないか?
馬車一台じゃ収まらなそうな量だ。
思わず「リリアナさん……?」と母に声をかけると、母も小さく頷いた。
「多いわね。お父様? それが全て村に運ぶものなんですか?」
「来たか。必要な物を揃えるとどうしても量が増えてしまうんだよ。……おや? 君が従えたオオカミは一緒じゃないのかい?」
祖父は母の質問に答えながらこちらにやって来る。
「厨房隣の保管部屋に待たせているわ。それよりも、アレはどうするの? アリスに選ばせるのかしら?」
「必要な物と言ったろう? 馬車は三台用意した。特に何もないのなら全部持って行かせるさ」
祖父は母にそう言うと、ボクに視線を向けた。
「アリス。あそこにある物はリリアナとエリーゼ様が必要と判断した物資だ。基本的に全てを運ばせる予定だが、君の目からも確認をして欲しい。いいか?」
「はぁ……よくわかりませんが……わかりました」
どうやら村にいる間に母やエリーゼ様たちとで必要な追加の物資を相談していたらしい。
ボクはそこには関わっていないから、一体何を用意したのかはわからないが……既に相談し終えてから選んでいるのなら、不要な物は入っていないだろう。
折角だし、色々説明してもらいながら物資を見て行くか。
「量は多いが、種類その物は大して多くはない。すぐに終わるだろう」
祖父はそう言うと、木箱の方に歩いて行った。




