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騎士団の詰め所での手続きを済ませたボクは、オオカミと一緒にビーンズ家の屋敷に戻ることにした。
街に着いてからすぐにお出かけして……外での魔物との戦いを終えて、さらに手続きでお役所巡りをしたりとで、一か所に落ち着くことはなかったんだが……とりあえず、街での用事はもう全部済ませたわけだし、後は槍の手入れが完了して届けられるまではここでゆっくりすることになるだろう。
そんなことを考えながら、屋敷への道を呑気に歩いていたんだが……。
「……っ!? アリスお嬢様っ!?」
「お仕事お疲れ様です!」
近付いて来るボクに気付いた警備員たちが、緊張した様子で門の前に出て来た。
母からオオカミの件を聞いていたんだろうな……。
「ただいま戻りました。……オオカミは中に入れても大丈夫ですか?」
「リリアナ様から話は伺っております。……ですが、我々では屋敷の中に入れていいかはわかりません。確認をしてまいりますので、玄関前で待っていただいて構いませんか?」
とりあえず敷地内には入れて大丈夫らしい。
それなら。
「庭で待たせてもらいますね」
この屋敷はこのエリアの奥の方に建っているが、それでも側を通る人がいるし……それなら玄関前でオオカミと一緒に立っておくよりも、庭で待たせてもらう方がいいだろう。
彼らもそれに気付いたようで、苦笑しながら「その方がよさそうですね」と笑っていた。
◇
この屋敷はラカンパの街の一等地に建っていて、敷地その物はしっかりとかなりの広さを確保されているが、それでも村の屋敷のように広い庭を用意出来るほどではない。
それでも、花壇や植木は整えられているし、それらがよく見える位置にベンチも設置されていて、庭でお茶をしたり出来るようになっている。
ボクはそのベンチの一つに座って、正面にオオカミを座らせた。
ここまで警戒していたのか、待機はしても座ることはなかったんだが……ここが安全だと分かったからなのか、特に命じることもなく大人しく座っている。
「よしよし……撫でても怒ったりしないね? ……別に人に敵対心があるってわけじゃないみたいだね」
目の前に座るオオカミをゆっくり撫でながら話しかけるが……オオカミは何の反応も示さない。
試しに魔力を流しながら撫でてみるが、それでも変化はなしだ。
怒っているようには見えないが……喜んでいるかもわからないし、魔力を通した指示以外のコミュニケーションの取り方がわからないな。
とりあえず撫でる手は止めずに、どうしたらいいんだろうな……と頭を悩ませていると、オオカミがふと首だけ横に向けた。
「どうしたの……おや、リリアナさん」
不思議に思ってボクもそちらに顔を向けると、屋敷の玄関の方から母が代官を引き連れてこちらにやって来ている。
「契約は上手くいったようね。……それで、そのオオカミの件だけれど」
母はすぐ後ろを歩いて来る代官に視線を向ける。
代官はボクとオオカミが揃ってジッと見ていることに気付いたのか、小さく咳をすると改めてボクを見る。
「済まないが、そのオオカミを屋敷内に入れるわけにはいかない。庭などなら構わないんだがな……」
「まぁ……仕方ないですよ」
この大きさの魔獣を屋敷内に入れるのはちょっとチャレンジ過ぎたか。
戦闘経験がある者も屋敷の中に入るが、使用人など全く戦闘経験がない者だっているし、屋敷内の安全のためには仕方長い。
「だが、あくまでそれは屋敷内であって、敷地に入ることを禁ずるわけではない。今の君のようにこの庭に立ち入ることは自由だ。もちろん、人を襲ったり、脅かすような真似をされたら困るがな」
「わかっています。ここで一緒に休ませてもらいますよ」
敷地内への立ち入りすら禁止されたら、流石に連れて移動出来る場所がなくなってしまうし、困ることになっていただろうが、そうじゃないなら問題なしだ。




