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オオカミについての説明を母にしている最中に、騎士団の詰め所から荷台が檻になった馬車がやって来た。
オオカミの移動はその檻に入れて行うそうだ。
ボクたちはこのオオカミがちゃんと言うことを聞く大人しい魔獣だとわかっているが、住民はそれがわからないし仕方がないだろう。
ちなみに、馬車が向かう先は代官の屋敷だ。
そこで契約したり登録したりするんだとか。
正規の手続きを踏むと、騎士団の詰め所で預かって観察する期間を設けるそうだが、今回は既に問題ないことは実践済みだし……ボクの身分やリチャードたちの口添えもあるから、すぐに成立するはずだと言っていた。
ってことで、まだ外の作業は残っているが、その場は残った兵たちに任せて、代官の屋敷に向かうことになった。
◇
「…………」
代官の屋敷への移動だが、ボクは母が乗って来た馬車で一緒に向かうことになった。
歩きでも良かったんだが、ちょっと目立ち過ぎるんじゃないか……と言われてしまうとそんな気がするし、母も一緒に行くのは構わないと言ってくれたため、お言葉に甘えることにした。
したんだが……何と言うか、気まずい。
母は何を考えているのかわからないが、目を閉じて腕を組んだまま黙り込んでいる。
沈黙がきつい。
両側の窓に視線を行ったり来たりさせていると、小さな溜め息が聞こえた。
「外の魔物の討伐は兄さんからの依頼だったのでしょう? どういう契約だったの?」
「いや……まだ何も決めてないです」
母の言葉に首を振りながら答えると、さらに大きな溜め息が返って来た。
「……今日の分は私が処理しておくわ。村ではエリーゼ様たちが処理をしていたわね。今後も彼女たちに任せるのよね?」
「そのつもりです。ボクも教わったら出来るようにはなるかもしれないですけど……」
自分で言うのもなんだが、ボクは決して頭が悪いわけではない。
読み書き計算も問題ないし、前世の知識も含めたらむしろ賢い部類だと思っているんだが……如何せんこれまでの人生を送って来た環境が大分偏っている。
どうしても一般常識だったり最低限の知識だったり……何が欠けているのかがまだわからない。
母も同じことを考えたんだろう。
機嫌が直ったのか、小さく笑うとこちらを向いた。
「そうね……例えば、今回のような討伐任務の補助の場合だと、討伐任務の完了をもって依頼の達成とすることもあれば、討伐した魔物の頭数によって報酬が変わったりすることもあるわね。貴女、今日は何体倒したか覚えているかしら?」
「え……っと、結構倒したとは思うけど、正確な数までは。それに、兵たちの援護があったからでボク一人で倒したわけじゃないですし……」
「混戦で冷静に周囲の状況を把握しながら、戦果を数え続けるのは難しいでしょうね。騎士団もそうだけれど、傭兵団だってそのために記録官を雇ったりする者もいるわ。確か群狼戦士団にもいたはずだけれど……今はもう無理でしょうね」
「へー……」
戦場での役職なんて野営地では聞く機会がなかったし、初耳の情報だ。
流石団長の奥さんだけあって、顔を全く出さなかったにもかかわらず結構詳しいじゃないか……と、感心してしまった。
「エリーゼ様はその辺りの差を理解しているかどうかよね。新しく入った傭兵たちなら理解しているはずだけれど……意見を出せるかどうか。その辺りのことを纏めておくから、帰りに持って行きなさい」
「わかりました」
「とりあえずは……それくらいかしら? 後は、あのオオカミね。……従えられるのかしら?」
「あくまでボクの勘ですけど……大丈夫だとは思います」
初めて会った時もそうだったが、何となくピンと来たんだよな。
とりあえず、指示を無視して暴れ回ったり人を襲ったりはしないはずだ。
それを伝えると、母は「そう……」と呟くと、腕を組んで困ったような表情を浮かべた。




