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とりあえずやることもないし、かと言って街の中に入るわけにもいかないし……ってことで、一先ず門のところで何が起きているのかを確認することにした。
大人しいし、ちゃんと言うことを聞いてくれるとはいえ、かなり強い魔獣と一緒にいるわけだし、場合によっては距離を取った方がいいかもしれないからな。
そんなことを考えながら、コソコソと門の奥を覗き込んでいると……。
「あらま……リリアナさん」
腕を組んでリチャードを睨みつける母と、何事か弁解をしているリチャードの姿が見えた。
さらにその奥には見覚えのある馬車があるし、母はアレに乗ってやって来たんだろう。
それを見た人たちが騒いでいた……ってところかな?
「あ」
母と目が合った。
コッチに来いと、ボクに向かって手招きをしているが……どうしようか。
「アリス団長殿、どうされた?」
どうしたもんかと躊躇っていると、その様子を不審に思ったのか作業中の警戒を行っていた騎士の一人が声をかけて来た。
「リチャード中隊長殿と……あのご婦人は確かビーンズ家の方ですな?」
「母です。ボクが伯父さんに呼ばれた時にビーンズ家の使用人と一緒だったから、連絡が行ったんでしょうね」
「どうやら団長殿を呼んでいるようだが、随分ご立腹だな。いいのか?」
母はボクに向かって手招きをすると、さらに自分の足元を指している。
コッチに来いってことだよな?
「行った方がいいんでしょうけど、このコがいますしね。……どうしましょうか」
「ふむ。ならば私もご一緒しよう。あそこに集まっている者たちを下がらせれば問題なかろう」
「!? それは助かりますね。お願いします」
彼は「うむ」と頷くと、先導するように馬を前に出した。
ボクは「行こう」とオオカミに呼び掛けると、その後をついて行った。
◇
「なっ!?」
ボクたちが門を潜って街中に入ると、まずは先頭の騎士に。
続けてその後ろのボクに視線は移って行き……最後にオオカミに辿り着くと、集まっていた者たちが驚きか恐怖か両方か……息を飲むのがわかった。
ボクが門の側で待機している間も、オオカミは街の中からは見えないように気を付けていたってことも大きいかもしれない。
母も同じだったが、それでも声を漏らさないのは流石と言っていい……のかな?
「っ!? ……アリス、来なさい」
騎士が門前に集まっていた住民を下がらせている間に我に返ったようで、母は自分の下に来るように手招きをしている。
その母にリチャードがオオカミを指しながら何か言っているが、危険はないとかそんなことを伝えているんだろうか?
「ご苦労様。怪我はない?」
「ええ。リリアナさんは……ここに何をしに? 仕事はよかったんですか?」
久し振りに街に戻って来て、色々仕事が溜まっていたと思ったんだが……わざわざここまで来てどうしたんだろうか?
「貴女が騎士団に連れていかれたと聞いたのよ。すぐに事情を確認したけれど、正確な情報は私にも入って来ないし……とりあえずこちらに集まっていることが分かったから、出て来たのよ……」
「それは……ご心配おかけしました……」
「貴女の責任じゃないから気にしなくていいわ」
母は深く溜め息を吐くとリチャードを睨みつける。
「街の混乱を避けるために、ある程度情報は制限したかったんだ。アリスを探すために街中に兵を出していたしな」
「まあ……いいわ。そこはまた後で話し合いましょう。それよりも……いえ、その前にそのオオカミはどうするの?」
「ああ、それだ。アリスと離れる気がなさそうなんだ。知能は高そうだし言い聞かせればどうにかなるかもしれんが、街や村の周りを半端にうろつかれても困るだろう? それならいっそアリスと契約させてしまう方がいいだろうと話し合ったんだ。幸い……彼女の拠点にはオオカミを放せるだけの場もあるわけだしな」




