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「以前は群狼戦士団には近づこうともしなかったが、グレイたちに比べると君は与しやすいとでも思ったのかもしれんな。ヤツ等と関わるな……とまでは言わないが、付き合い方には気をつけろ」
「何か悪いことでもしてるんですか?」
リチャードの咎めるような口調に、ボクは首を傾げた。
積極的にお友達になろうとは思っていないが……警戒しないといけないような人たちなんだろうか?
「素行は良くないが……取り締まるほどのことはしていないだろう。アイツ等の狙いは群狼戦士団の下仕事だ。だが、今の状況で君にその判断は出来ないだろう?」
「……なるほど」
何でもかんでも団内で賄うんじゃなくて、簡単な調査だったり物資の調達で現地の組織を頼ることは、まだ群狼戦士団が健在だった頃にもあった気がする。
どんな風にお金が動いていたのかまではわからないが、当然仕事として任せているわけだからタダ働きってことはないだろう。
収入にもなるし……群狼戦士団の看板も使えるかもしれないとなれば、寄って来ることもわかる。
リチャードが言うようにそれ自体は別に悪いことではないが、彼らについてボクは何も知らない。
もちろん、何かしら契約を結ぶようなことはないんだが、変な言質を取られたりしても困るし、ああやって追い払ってくれたのは助かるな。
「助かりました。気を付けます」
ボクの返答はリチャードにとって満足いくものだったらしく、「フッ」と笑みを見せた。
「無論、傭兵団の活動の中でああいった連中が必要になることもあるが、少なくとも今ではないな」
いずれは他所の組織との付き合いなんかも考える必要が出るのかもしれないが……今はまだまだだ。
それに、その辺りはエリーゼ様たちがいるし、彼女たちに任せるのが一番だろう。
ボクが気を付けることは、勝手に誰かと約束をしたり……仕事を取ったりしないことだな。
「…………あれ?」
ボクはふと足を止めると、前を行くリチャードをジッと見る。
「どうした?」
ボクが立ち止まったことに気付いたリチャードは、馬を止めると振り向くと、ボクの視線に気付いて訝しんだ表情を浮かべた。
「ボクのこの仕事ってどうなるんでしょう?」
今日の仕事こそまさに口約束で勝手に引き受けた仕事なんだが……どうなっているんだろうか。
流石にリチャードがボクを騙したり搾取するようなことはしないのはわかっているが、こういった場合の相場がわからないんだよな。
そもそも、よくよく考えてみると農場や村の警備はしていても、アレは依頼を受けてじゃなくて、滞在費用代わりにやっているだけであって……何気にコレが初めての依頼だったりもする。
……傭兵の契約ってどうしてるんだろう?
「今日の分はリリアナを通すから安心しろ。今日すぐに現金が必要と言うこともないんだろう?」
「ええ。裏の森で獲れた獣や魔物の素材を売却したお陰でお金はありますからね」
今のところ群狼戦士団のいらない物資を売却して調達した資金や、エリーゼ様の手持ちの資金には手をつけなくても、しばらくはどうにかなる。
「ふむ。資金繰りに苦労していないのなら何よりだ。金のない傭兵団など気を抜けばすぐに野盗に落ちかねないからな」
リチャードは何か嫌な記憶でもあるのか低い声でボヤいているが。
「む?」
北門の手前までやって来たところで、門前が先程よりもざわついている。
騒動が起きている……ってわけでもないのに、何があったんだろうか?
「何か騒がしいですね?」
「門前にいた者たち以外にもそろそろ知られてはいるだろうが……騒ぎになるほどではないはずだ。誰か来たのか? そのオオカミは刺激しかねないな。そこで待っていろ」
ボクたちに待機を命じると、リチャードは馬を走らせていった。
オオカミと顔を見合わせると、手持無沙汰になってしまったなと小さく溜め息を吐いた。




