227
門が再び開かれると、門の周囲には街の住人たちが遠巻きに群がっていた。
前回街を訪れた時の西門と同じような状態だ。
まだ住民には魔物との戦闘が行われているってことは布告していなかったはずだが……門前に騎士団の隊が集まっていたし、緊急事態といっていいような動きをしていたから予想は出来たんだろう。
それでもこれだけ野次馬が現れるって辺り、平和ボケなのか……それとも騎士団の戦力を信用しているのか、どっちかかな?
何にせよ街で騒ぎが起きたりもしなかったし、西側の小屋群にも被害は一切出ていないし、ついでにボクも結構いい仕事をしたと思うし……万々歳かな?
「アンタ。お嬢ちゃん!」
「うん? ボクですか?」
門の側で壁にもたれかかりながら、騎士たちによる魔物の死体の撤去作業を眺めていたんだが、横から声がかかった。
そちらを振り向くと、小屋群の方にも門の内側と同じように人だかりが出来ていた。
ボクに声をかけて来たのは、その中の一人だ。
がっしりとした大柄で髭を蓄えた赤毛で強面の男性。
周りの者たちは彼に視線を向けているし……ココの顔役みたいな人なのかな?
「アンタ、前そこでオオカミの群れを片付けてたよな? 武器や恰好は少し違うが……その髪は覚えてるぜ」
彼は自分の髪の毛を指しながら、こちらに近付いてくる。
だが、ボクとはまだ十メートルほどのところで足を止めた。
「?」
「あー……っと、先に聞いておくがそのオオカミは……大丈夫なのか?」
オオカミが怖かったのか。
「ちょっかいをかけなければ大丈夫だと思いますけど……何か用事ですか?」
「お……おう。距離があってあんまりハッキリとは見えなかったが、アンタも大分魔物どもを仕留めていたからな。お陰で向こうに被害が出なかった」
彼は後ろの小屋群を親指で指しながらそう言うと、軽く頭を下げた。
それに倣うように、後ろに控えていた連中も揃って礼をする。
彼に限らず、外にいる者はちょっとはみ出し者というか……アウトローというか……そんな者たちが多い。
その彼らがこうやって来ると、前世のソッチ系の映画のワンシーンのような迫力がある。
ボクは育った環境がアレだったから多少は免疫はあるが、普通の人だと逃げ出してしまうんじゃないだろうか?
ともあれ。
「いえいえ。被害が出なかったのなら何よりです。それに、ボクも依頼を受けたからですし気にしないで下さい」
ボクは彼に気にしないでくれと伝えた。
今回はたまたまリチャードから依頼を受けたことで参加したが、それがなければ街の住民と同じように、呑気に散策を続けていたかもしれない。
「そうか。まあ、それでも助かったぜ。アンタ確か群狼の新しい団長なんだろう? 何か今後必要なことがあったら言ってくれよ。二回も助けられたんだ。アイツらも喜んで働くぜ」
前回の件も込みで恩でも感じているのか、そんなことを言ってきた。
今のところ必要だとは思わないが、それでも世の中何が起きるかわからないし、その際はお言葉に甘えさせてもらおうかな?
「あぁ……それは」
ボクは「ありがとうございます」と続けようとしたんだが。
「アリス!」
いつの間にやら側に来ていたリチャードの鋭い声に遮られてしまった。
「リチャード中隊長殿……そちらも群狼の団長様にご用ですかい?」
随分と険のこもった声だが、リチャードや騎士団と彼らはあまり関係は良くないんだろうか?
「彼女は私の姪だ。いらん勘繰りはよしてもらおう。アリス、来なさい」
リチャードの言葉に彼は目を丸くしているが、すぐに「そういうことなら……」と下がって行った。
だが、その際に小さく舌打ちをしていたことにボクは気付いた。
まぁ……街やその周辺の治安維持が仕事のリチャードと、街のすぐ外に居ついている連中だし、敵対はしないまでも、やっぱり仲悪いのかな?




