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ひと吠えしたオオカミは、ゆっくりとボクに近づいて来る。
サイズがサイズだけに……黙っていても凄い迫力だ。
だが……「一緒に戦うかな?」と魔力に一緒に声を乗せると、先程同様にまた短く吠えて応えてくれた。
これはもう意思疎通は出来ているよね?
少々危ないかもしれないが、オオカミから視線を外して後ろを振り返る。
「……向こうはまだ続いてるね」
戦況はわからないが、戦闘の輪から離れた場所に下がったリチャードが指示を執り続けているし破綻はしていないんだろう。
ただ、何を言っているのかまでは聞き取れないが、大声で怒鳴り続けているし、掲げた槍に魔力が込められたりもしている。
……まだまだ気を抜けないみたいだ。
再びオオカミに視線を戻すと、しっかりと距離を保ったまま大人しく待っていた。
「これなら大丈夫だね? 行こう!」
最後の単語にだけ魔力を乗せると、ボクは戦闘が繰り広げられている場所に向かって走り出した。
◇
「伯父さん!」
「アリス……オオカミっ!?」
ボクの声に振り返ったリチャードは、すぐ後ろのオオカミに気付き驚きの声を上げると、槍を向けようとした。
従者からボクがオオカミの足止めに向かったことは聞いていたんだろうし、失敗して助けを求めに来たとでも思ったんだろうか?
リチャードの前に立つと、ボクはバッと両腕を広げて立ち塞がる。
「大丈夫です! 一緒に戦ってくれます!」
「何だと……?」
リチャードは眉を顰めて、ボクの後ろにいるオオカミに視線を移す。
ボクも振り返るが、二メートルほど離れたところに立ち止まり大人しくこちらの様子を見ている。
これを見て、少なくともボクが襲われているとは思わないだろう。
リチャードは何かを言おうと、ボクとオオカミの間で視線を何度か行ったり来たりさせたが、後ろから伝わってくる戦闘の様子にそれどころではないと判断したらしい。
纏っていたマントを外すと投げつけて来た。
「それをオオカミの首に巻いておけ。我々は攻撃させるなよ!」
「っ!? わかりました!」
指揮に戻って行くリチャードにそう答えると、ボクはオオカミの下に近付いて行く。
「……うぅ、近くで見ると凄い迫力だね。でも見分けるためにも必要だしね……」
リチャードが投げ渡してきたマントは、雨避けや防寒目的じゃなくて身分を示すための物なのか、腰までの比較的短いが真っ赤で目立つデザインだ。
これだけで仲間かどうかはわからないだろうが、少なくとも野生の獣や魔物は身に着けないだろうってことは一目でわかるし、魔物たちと一緒に攻撃をされることはないはずだ。
「……よしっ! 行こう!」
解けないようにしっかりと巻き付けると、軽く背中を叩いて、改めて走り出した。
◇
オオカミと一緒にボクも姿を見せると、騎士たちは一瞬挙動がおかしくなったが、巻きつけたマントを見てすぐに敵じゃないと分かったようで、また魔物に向き直った。
マントの効果は十分みたいだし、これなら一緒に戦っても大丈夫だろう。
「アリス! そいつをやれ!」
どれを狙おうかな……と一度足を止めると、すぐにリチャードの声と共に一体の大型の頭部に赤い光が灯った。
当の魔物は何の反応も示さないし、別に痛くも熱くもないんだろうが……アレを狙えっていうリチャードの合図なんだろう。
先程から彼が使っていた魔法はコレか。
ああいった戦い方もあるのか。
わかりやすいし、ボクも覚えたい方法だ。
まぁ……それはいいとして。
「どう戦うかだね。この剣でやれるのかな?」
ボクは抜いた小剣の刃を見て、大型に斬りかかるのを躊躇ってしまった。
強化してしまえばちょっとやそっとで折れるようなことはないと思うが……先程まで見た目だけならずっと頑丈そうな武器を散々壊してきたし……どうする?




