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戦闘から一旦距離を取れと言われたボクは、門の側まで下がって来た。
「アリス団長、武器はどうされますか?」
リチャードたちとの会話は距離があったから聞こえなかったようで、従者がいくつかある籠を指して、次の武器は何にするかを訊ねて来た。
ちなみに、元々彼が持っていた籠は一つだけだったんだが、ボクが彼から武器を供給されていることを知った向こうの隊が、こちらに予備の武器を置いて行ったため、今では四つも並んでいる。
見たところ同じデザインの武器ばかりだし、騎士団の支給品ってところかな?
性能も大差ないだろうし……どれを選んでも変わりはなさそうだ。
ともあれ、従者の言葉にボクは首を横に振った。
「少し離れて休んでいろって言われたんです」
ボクはそう伝えると、門すぐ横に歩いて行く。
西門と……と恐らく東門も、主要な街道と繋がっているから人の往来も多いし、それに相応しい頑丈な造りになっているが、北門は西門に比べるとずっと地味な造りになっている。
だが、門を保護するためなのか、庇のようなものは設置されている。
高さは……五メートルちょっとくらいかな?
「ふぅ……ほっ!」
呼吸を整えると、ボクはその庇に飛び乗った。
無断で街壁に飛び乗るのは流石にマズいだろうが、ここくらいなら別に構わないだろう。
「さてさて……?」
ボクは少し背伸びをして、魔物との戦闘が繰り広げられている場所に視線を向けた。
先程までは街壁側で戦っていたが、少しずつ街壁から離れて草原の方にズレて行っている。
その指揮はリチャードが執っているみたいだ。
「戦い方を変えるみたいだけど、どういう意図なんだろう?」
止めを引き受けていたボクが離脱した影響はあるのかもしれないが……開けた場所で戦いやすそうなのに……。
「うん?」
リチャードの隊とは別の、重装備の隊の騎士たちが距離を取っていることに気付いた。
「さっきまではもっと狭い範囲で戦ってたのに……むしろこっちが本来の戦い方なのかな?」
確かに突撃をするなら、速度を出すために加速する距離がある方がいいだろう。
先程まではボクがメインで倒していたから、リチャードたちと一緒に魔物の足止めを行っていたからな。
「……お? 一体倒した」
そのまま眺めていると、突撃をした騎士の一人が大型の魔物の胸を槍で貫いていた。
大型はそのまま後ろ向きに倒れていき、そのまま起き上がらない。
仕留めたんだろう。
「アリス団長! どうなっていますか?」
従者の彼が下から戦況を訊ねて来た。
戦場が遠ざかっていくことで、地上にいる彼からは状況が把握出来なくなっているんだろう。
「今、もう一つの隊の人が一体倒しましたよ。距離を取ってから突撃してるみたいです!」
彼に説明をしながら、見たままを口にしただけで何の解説にもなっていないことに気付いた。
よくよく考えると、人が戦っている姿をまともに眺めるのは、以前エリーゼ様が襲われた際に近くの村の建物の上から見たのと今回で二回目だし、集団での戦闘の勉強もしたことがないから、人に伝えるための知識を持っていない。
それに、距離が離れたことでだんだんボクも見えなくなってきている。
街壁の上からならともかく、ここじゃそろそろ限界が……。
「ん?」
「どうかしましたか!?」
「アッチ……見えますか? 何かが走って……」
ボクはリチャードたちが戦っている場所から西に離れた草原を、黒い何かが走って来ている。
速いし……大きいし……アレは……。
「アレは……オオカミですよ! あの大きさは魔獣です! 戦いに引き寄せられたか!?」
従者が慌てた様子で伝えて来る。
「コレを避けるために森から離したのにね……まぁ、一頭だけならマシなのかな?」
ボクは庇から飛び降りると、従者の下に向かった。




