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従者の彼が差し出してきた棍棒を受け取る。
彼は魔力の強化が使えないのか両手で重そうに持っていた。
「ありがとうございます」
ボクはそれを受け取ると、再び戦場に向かって走り出す。
重いことは重いが、片手で持って走り回れるし……その気になれば高く飛び上がることも出来るだろう。
問題は……だ。
チラッと視界に入った棍棒を見て、ボクは「はぁ……」と小さく溜め息を吐いた。
このトゲトゲが付いた棍棒はあまりにもビジュアルが悪役過ぎる。
タダでさえボクは目立つ恰好をしているのに、こんな見た目が悪い武器を振り回しているところを人に見られたら……。
「騎士団とか傭兵なら別に問題はないんだけどね……」
彼らなら驚きはしても、見た目よりも実用性というか……実際の戦果の方を評価するだろうから気にしなくてもいいんだが、街の住民たちはどうだろうか。
「門を下してくれたのは助かったね。……さてと」
前を見ると、ボクが武器を取りに行ってから魔物の数は減っていなかった。
少しずつ魔物の体に傷は増えているが……ボクが一撃を与えたヤツすら倒せていない。
「安全策を取ってるのかな? まぁ……それならボクが仕留めてしまえばいいか」
彼らが足止めをしてダメージを与えて弱らせて、止めはボク。
これだ!
改めて方針を決めたところで、先程まで使っていた斧と同じ要領で棍棒に思い切り魔力を流すと、戦っている彼らの輪の中に向かってさらに加速して突っ込んで行った。
◇
「アリスっ!?」
頭上を飛び越えながら突っ込んで来たボクに、リチャードが声を上げるが……それを無視して魔物に突っ込んで行く。
「たぁっ!!」
別の個体だが、再び大型の背後から襲い掛かる。
前から突っ込んで来る騎士たちを迎え撃とうと前傾姿勢になっているため、背後は全くの無警戒で隙だらけだ。
先程は威力を出そうと地面に踏ん張りながらだったため、高さが肩までしか届かなかったが、その反省を活かして今度は大型の肩付近まで飛び上がった。
そして、棍棒を頭部目がけて叩きつける。
グシャっと嫌な感触が棍棒越しに両手に伝わって来た。
……これは流石に死んだだろう。
「やったなっ! コイツらはとにかくタフで仕留めるのが手間なんだが……よく一撃で仕留めた!」
今倒した個体に突撃をしようとしていた騎士が、ボクの前で止まると声をかけて来た。
「だが……あの威力、まだ戦えるか?」
その言葉に「ん?」と首を傾げたが……そう言えば、先日森の木を槍でへし折った時に、槍を振るった自分の腕にもかなりの痛みがあったことを思い出した。
この威力を目の前で見せられたら、ボクの体が大丈夫か心配にもなるか。
だが。
「大丈夫です。まだまだいけるから、そちらでも倒すのが面倒なら、適当に注意を引いといてください!」
そう言うと、彼の返事を待たずにボクは別の魔物に向かって走り出した。
◇
リチャードの隊はもちろんだが、もう一つの隊も碌に打ち合わせなんてしていないのに、しっかりとボクに合わせて動いてくれている。
お陰で、ドンドン魔物の数を減らすことが出来ていた。
「はっ!! ……って、あぁっ!?」
ちなみに、武器も順調に壊してしまっている。
これで三本目の棍棒も砕けてしまった。
一本目は折れ曲がり、二本目はへし折れて……三本目は砕け散る。
だんだんと壊れ方がひどくなってきているな。
四本目はどうなってしまうんだろう。
「アリス! 君は一旦下がれ。強化の加減が効かなくなっている。武器にはまだ余裕はあるが……このままでは君がもたんぞ!」
遠慮なく壊せと言っていたリチャードだが、この状況は少々想定外だったらしい。
ボクもガンガン強化して景気よく壊していることに少々不安を覚えて来ていたし……ココはお言葉に甘えて一旦下がらせてもらおう。




