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「はああっ!!」
魔物との距離が大分縮まって来たところで、リチャードは槍を振るって溜め込んだ魔力を風の魔法に変えて、向かって来る魔物たち目がけて撃ち放った。
風の魔法ではその一発で魔物を倒せることはないようだが、足止めには十分過ぎるほどの威力があるようで、こちらに向かって走っていた魔物たちの足を、そのひと振りで止めてしまった。
「行くぞ!」
リチャードはすかさず部下たちに指示を飛ばすと、足を止めた魔物たちに突撃をしていく。
もっとも、その突撃は魔物を仕留めるためじゃなくて、あくまでより完璧に魔物たちの足を止めるためのもので、大型の魔物にひと当てしてはすぐに横に抜けて行っていた。
アレだけ勢いがあったにもかかわらず、強風とその突撃で魔物たちの気は完全に逸れたようでその場で足を止めている。
その間にリチャードたちはまた魔物たちの前に戻って来て、そして後ろから魔物たちを追い立てて来ていた重武装の騎士たちも追いつき、魔物たちとの戦闘が始まった。
「おぉぉ……?」
もう開幕の一発目のような魔法を使った足止めは行われないが、リチャードたちが上手いこと魔物たちの周囲を走りながらその場に留めている。
ココからだとそれくらいしか見えなくて、戦況はどうなっているのかまではわからないが……今のところ順調そうだ。
「コレって……ボク必要ないんじゃ?」
出番がなさそうだな……と斧を下して眺めていたが……。
「アリス! 入って来い!」
「おぉっ!? わかりましたー!」
リチャードが槍をこちらに向かって振るいながら大声を上げた。
どうやら出番はあったらしい。
ボクは足に溜まった魔力をそのまま強化に回して、街壁沿いに戦場に向かって走り寄った。
◇
「うわぁ……」
街壁沿いにリチャードたちの隊を追い抜いて、魔物たちの姿を視界に捉えた。
先程は距離があって上半身程度しか見えていなかったが、接近したことでその全身を直視してしまった。
背が高いだけじゃなくて腹が出ているが……肥満体というわけではなさそうだ。
ブタのような顔をしていて全く表情はわからない。
ついでに、雌雄の見分け方もよくわからない。
その魔物は、無表情のまま騎士の騎馬突撃を巨体を活かして受け止めては、馬に頭突きをしたり腕を振り回して反撃をしている。
傷は負っているみたいだが到底深手とはいえないし、アレはまだまだ暴れ続けるだろう。
アレが何かはわからないが……確かに油断出来ない相手みたいだ。
それが全部で十体以上いて、足元をチョロチョロ動き回っているゴブリンも同じか……少し多いかくらいいる中々の大所帯だ。
これはもしかしたらボクの個人的な感性の問題なのかもしれないが……全裸なんだよな。
ボクからしたら、雌雄よくわからない二足歩行する大柄の生き物が大暴れしているように見えてしまう。
ゴブリンを初めて見た時は思わず「キモっ!」と叫んでしまったが、今回は何とか飲み込んだ。
我ながらよく堪えたものだ。
「はぁ……まぁ、止めを刺しあぐねているのはよくわかったし、ボクにはそれを任せたいのかな?」
もう少しじっくり戦況を観察したいところだが、これ以上見たところで大してわからないのも事実だ。
だからこそリチャードも、ボクが参加するタイミングを自分で指示するって言ったのかもしれないしな。
「コレがどれくらい使えるのかわからないし……とりあえずゴブリンからかな?」
ボクは右手に持った斧に魔力を込めていく。
普段ボクが使っているミスリルの槍に比べたら魔力の通りはずっと悪い。
全く手入れをされていない状態で魔力を通した時よりも、さらに反応が鈍い気がする。
いつもの感じで思い切り振り回してへし折れでもしたら困るし、まずは確認からだな。
方針を決めたボクは小さく「よし!」と呟くと、一気に戦闘の輪の中に飛び込んで行った。




