218
「中隊長殿! 何があったんですかい?」
ゾロゾロと街から出て来たボクたちに、少し離れたところにある小屋群から武装した男たちが出て来た。
警戒はしているみたいだが、騎士団を相手に事を構える気はないのか武器は手にしていない。
リチャードは馬上から彼らを一瞥すると「魔物だ」とそっけなく言い放つ。
「……手伝いは?」
「不要だ。余計な騒ぎにならないように、お前たちが抑えておけよ」
リチャードのその言葉に彼らは小さく舌打ちをしたが、言われた通り大人しく小屋の方に戻って行った。
「何か……反感買ってそうですけどいいんですか?」
手伝ってもらわないにしても言い方はもう少し気を使ってもいいんじゃないか……と思ったんだが、リチャードは「構わん」と首を横に振る。
「街に入れるほど稼げない傭兵だ。半端に関わられても邪魔になるだけだ。それなら初めから離しておいた方がいい。君もああいった連中の扱いを覚えておくといい」
まぁ……ただでさえ緊急の出動なのに、実力がどうかもわからなければ、そもそも素性すらよくわからない連中と一緒に任務にあたるのは避けたいってのはわかる。
「……見えて来たな。アリス、君は離れたところにいろ。私が合図をしたら戦闘に加われ」
「わかりました」
前を見ると土煙が上がり、さらに追い立てている馬の蹄の音も聞こえて来た。
魔物たちの突進を受け止めるために騎士団の面々がゆっくりと広がって行く中、リチャードの指示に従って、ボクは街壁の方に下がって行った。
◇
リチャードの役職は、街の警備隊中隊長だ。
街の……とはいっても、街中だけじゃなくて街の周辺も範囲に入っている。
ただ、あくまで警備隊であって、街や周辺の巡回任務や各門の警備が主任務なんだろう。
よくよく思い返せば、二度目に街を訪れた際に草原に出て来た騎士たちに比べると、リチャードの隊の隊員の装備は軽装だった。
「……凄い迫力だね」
前方から魔物を追い立てて来る騎士たちは、騎乗しての戦闘が専門なんだろう。
リチャードの隊員たちよりも一回りはあるんじゃないか……ってくらい、遠目からでもわかる頑強な鎧を身に着けている。
馬にも鎖帷子のような物を被せているし、それがより一層際立たせているんだろうな。
「そろそろかな?」
ついつい後ろの騎士たちに目が行ってしまっていたが、魔物ももうハッキリ見える位置にいる。
ゴブリンが何体もいるのはわかるが、それよりもさらに大きな二足歩行の魔物も混ざっている。
「足は速くないみたいだね。……アレに速さを合わせているのかな?」
大股でドスドスと重そうな足音を響かせながら走っているが、余り速度は出ていない。
どれくらいの強さかはわからないが、ゴブリンの倍近く……あるいはそれ以上のサイズだし弱いってことはないだろう。
リチャードは足止めをすると言っていたが、どうやって止めるんだろうか?
馬で体当たりでもするんだろうか?
「……んんっ!?」
いつでも走り出せるように、足に魔力を溜めながらそちらを見ていると、リチャードが魔物たちに立ち塞がるように一騎だけ前に出た。
家柄だけで中隊長の地位にいるわけじゃないだろうし、ちゃんと腕も立つんだろうが……倒すならともかく一騎だけで足止めをするつもりなんだろうか?
彼の部下に動きはないから大丈夫なんだろうが……と考えながらも、リチャードの動きをじっと見守っていると、彼は手にした槍を掲げた。
「何を……? もしかしてアレが合図?」
リチャードの行動の意味が分からずそのままジッと眺めていたが、彼はさらに次の動作に移っていた。
掲げた槍の穂先に徐々に魔力が集まっている。
カイルたちほどではないが、傭兵たちに比べると強力だし魔力の流れも滑らかで、彼の練度の高さは伝わってくる。
だが、武器の強化にしては槍全体にじゃなくて穂先の一点のみだし……。
「魔法を使うつもりなのかな?」




