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森から魔物が出て来て街を襲うかもしれない。
街に被害を出さないために、戦いやすく万が一の際にも被害が少ないであろう北側に誘導する。
だが、街の北側には街に入場するだけのお金がない者たちが滞在している小屋群があり、このままではそこに被害が出かねない。
そんな事態を避けるために、リチャードであるリチャード中隊長は街の北側に陣を敷いて迎え撃つんだとか。
そして、より守りを万全にするために、街を訪れていたボクにその作戦への参加を依頼して来た。
魔物が相手ってことしかわからないし、ボクにどんなことをやって欲しいのかもわからないが、その要請自体は別に構わない。
問題は……だ。
返事を待つリチャードの目を見る。
「ボク、今槍を工房に預けているんです。この剣しかないんですよね」
左腰に提げている小剣を軽く持ち上げて、それをリチャードに見せた。
「……使えないのか?」
「使ったことがないんです。剣は一度ありますけど、これはちょっと特別製みたいですから……」
素材は高純度のミスリル製で細身の小剣……と、普通の剣とは言い難い代物だ。
どちらかというと、直接斬りつけるための剣というよりは、魔法を使うための杖の方が役割は近い。
果たしてボクの力任せの剣の使い方で壊したりしないだろうか。
「……よくわからんが、それなら」
リチャードは「おい!」と集まっている兵たちに声をかけると、その中から大きな籠を背負った男が走って来た。
彼が背負う籠には武器でも入っているのか、頭越しに柄が何本も見えている。
「その中にある武器を使うといい。魔物相手に力任せの戦闘を想定した物を選んでいる」
リチャードはそう言うと、門前に待機している兵たちに指示を出しに、彼らの下に歩いて行った。
その背中を眺めていると、籠を背負った彼が声をかけて来た。
そして、門の方を指す。
「ココでは少々目立ってしまいます。団長もあちらへ……」
言われて気付いたが、野次馬の視線がボクに集まっている。
仮面かボクの存在か両方か……ただでさえ外の様子は住民には伝えていないみたいなのに、ボクみたいな目立つのが現れたらこうなってもしょうがない。
ボクは「わかりました」と返すと、彼の指示に従って門の側まで移動した。
◇
籠の中に入っていた武器は、長い柄の先にトゲトゲの鉄球が付いた物だったり、こん棒にやっぱりトゲトゲが付いている物だったり……前世のマンガで悪役がよく持っているような物ばかりだった。
確かに力任せに振り回すのなら、こういった代物の方がいいのかもしれないが……ボクが使うには少々イメージが悪い気がする。
ってことで、選んだ武器は長い柄を持つ片刃の斧だった。
あまりこれもイメージは良いとは言えないが、それでも他の武器よりは良い気がする。
一応どの武器も騎士団の備品で、少量だがミスリルが交ぜられているから魔力は通りやすいそうだ。
この斧は柄も金属製で、かなり重たいしバランスも良くはないが、ボクなら魔力で強化が出来るし問題なく扱えるだろう。
「アリス」
魔力で体を強化しながら斧を片手でブンブン振り回していると、リチャードが近付いて来た。
「準備が出来たのなら外に出る。我々が外に出た後は門を下すが……構わないか?」
「ええ。いつでも大丈夫ですよ」
「我々は馬にこそ乗っているが、周囲を走り回ったりせずに、門の手前に広がって魔物を通さないようにする足止め役で、止めは追い立て役に背後を突かせる。さて……口契約なのに申し訳ないが逃亡は許されない。いいな? それさえ守れば君は好きに動いてもらって構わない」
「わかりました」
要は危なくなったら自分たちの後ろに隠れろってことかな?
逃亡は許されないと言っている割に随分親切な話だ。
リチャードは一通りの説明を終えると門の側に待機させていた馬に乗り、全員に向かって出発を告げた。




