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売り場の一階を一通り見て回り、次は二階に移動しようかと話していた。
一階は食品がメインだが、二階は工房で製作した品を置いているらしい。
農業道具や、自宅のキッチンなどで使用する道具……少数だが魔道具などもあるんだとか。
食品売り場もそれなりに楽しめたが……どちらかというと二階の方が興味があるかも知れない。
フロアの中央にある二階への階段に向かって三人で歩いていたが、玄関の方から言い合うような声が聞こえて来た。
先程まではお高いお店というだけあって、無駄な会話もない静かな空間だったのに……一気にその雰囲気が崩されてしまった。
「む? ……何だ?」
「騒がしいわね? いやね……賊とかじゃないわよね?」
「門前にも入ってすぐにも警備の者がいる。お嬢様はシェリルと一緒にこの場にいて下さい」
彼はそう言うと騒ぎの下に向かおうとしたが。
「っ!?」
それよりも先に、バンと玄関ホールに繋がるドアが乱暴に開けられた。
さらに、何人もの武装した男たちが入ってくる。
「賊……じゃなさそうですね」
初めはお姉さんが口にしたように、賊か何かの類かとも思ったが装備がしっかりとしているし、統一感もある。
案内役の彼が小さな声で「騎士団か……」と呟くと、そちらに向かって歩いて行く。
さらに、彼だけじゃなくて他にもいた売り場の人間が、その男たちに詰め寄っている。
「ここはビーンズ家の商会本部だ。騎士団が何用か!」
「誰の許可を取ってやって来た!」
ビーンズ家の商会だからなのか、騎士団相手にも気後れせずにガンガン詰め寄っている。
騎士団の男たちはその彼らを押し退けて、売り場に踏み込んで来た。
そして。
「アリス団長はおられるか!?」
売り場全体に聞こえるような大声でそう言った。
「……お嬢様のことみたいね?」
「捕まるようなことをした覚えはないんですけどね……」
ボクを売り場の後ろに押しやろうとするお姉さんの手を躱すと、前に出ていく。
「ちょっと!?」
「少なくとも乱暴な真似はしなそうだし……それに、ちょっと気になることもあるんです」
慌てるお姉さんを置いて、ボクは彼らの下に向かった。
◇
「……っ!? アリス団長でしょうか?」
奥から出て来るボクに気付いた一人が、ギョッとしたような表情を浮かべながらも訊ねて来る。
「ええ。何か用でしょうか?」
「はっ。リチャード中隊長が、アリス団長をお呼びするようにと。同行願えますか?」
何もしていないボクを騎士団の人間が探すとなれば……それはリチャードの命令の可能性が高い。
そう思っていたし予想通りだから別に構わないんだが、一体何の用なのかを教えてくれないのは気になる。
リチャードが呼び出したのなら変なことじゃないんだろうが……改めて問いただそうと口を開きかけたところで。
「何の騒ぎだっ!」
二階に繋がる階段の方から声が響いた。
声の主はここの会頭を務めているジャックだった。
今日は屋敷じゃなくてここで仕事をしていたみたいだが、下の騒ぎに気付いて降りて来たんだろう。
「騎士団が私の店に……アリスか?」
玄関前に集まっている中にボクがいることに気付いた祖父は、制止する部下たちを振り切ってこちらにやって来る。
以前屋敷で会った際には穏やかそうなおじさんって印象だったが……職場だと中々威厳がある振舞いをしている。
そのままの勢いでボクと彼らの間に立って、低い声で「何があった?」と訊ねた。
「リチャード伯父さんがボクに用事らしいですよ。用件はまだ聞いていませんが……」
「申し訳ありません。この場で話すことは出来ず……」
「…………アリス、構わないか?」
「ええ。何の用なのか気にはなりますけど、随分急いでいるみたいですしね。……シェリルさんたちをお願いします」
祖父にお姉さんのことを任せると、ボクは騎士団の彼らに同行することにした。




