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お姉さんに多少の気合が必要ではあったが、それでも警備に話を通したこともあってか、すぐに中から若い男性が案内としてやって来て中に通してもらえた。
一応誰でも入れるような店ではあるが、入ってすぐに売り場が広がっているわけではなくて、ベンチなどが設置されているちょっとしたホールになっていた。
店に用がある人間のお付きの者たちが待機出来るようになっていて、今も数人の男たちがそこに座って話をしている。
そして、ホールの奥に大きな両開きのドアがあり、その両隣に警備兼ドアの開閉役の大柄な男性たちが立っている。
規模こそ小さいが、前世のデパートとかに近い雰囲気だ。
「どうしたんだ? お屋敷で何か入用か?」
「アリスお嬢様に街の案内をしているのよ。他の店も見て回ったけれど、ここも見てみたくて……いいわよね?」
その案内の人は初めに挨拶をした際に教えてくれたが、お姉さんの親戚らしい。
だからなのか、お姉さんは気安く接してはいるが……どこか気まずそうな雰囲気ではある。
詳しくは聞かなかったが、年も近いみたいだし……従兄とかなのかな?
お姉さんは街中で知り合いに話しかけられても、ボクのことはビーンズ家の客とかボカシて説明をしていたが、流石に直接案内を行う彼には話している。
ただ、元々ビーンズ家の関係者にはある程度ボクのことは伝わっているようだ。
銀髪で顔を隠している娘……って見た目でボクだと予想は出来ていたらしく、そこまで驚いた様子はない。
頭を下げて丁寧に挨拶をしてくれた。
「当館は一階と二階が販売スペースで、三階から上が商談用になっています。案内出来るのは一階と二階のみになりますが、よろしいでしょうか?」
「ええ。それで構わないわ。ね?」
彼の店の案内の説明に、お姉さんが勝手に返事をしてしまうが……確かにそれでも十分だ。
ボクも頷くと、彼は「わかりました」と言ってドアを開けさせてホールから売り場の中に入って行った。
◇
さて、一階の売り場に入ったボクたちは、案内されるままに売り場を歩いて行く。
デパート……というよりは、ちょっとお高めのスーパーに近いだろうか?
玄関ホールにお付きの者が待機していたことからもわかるが、売り場には何組ものお客さんの姿があった。
まず彼女たちはボクの姿を見て驚いて、そして次にお姉さんを見て何となく理解したのか、軽く会釈をしてまた商品に視線を戻している。
「ココはどういう人たちが来るんですか?」
見た感じ服装からどこぞのお屋敷の使用人ってことはわかるが、お付きの者を連れていたりもするし、仕事着なのに、街ですれ違った住民よりも良い生地の服を着ている。
この店はどういうお客さんを想定しているんだろうか?
「七家や商会の人間が主に利用されます。一階で扱っている品は食品類が多いですね。ビーンズ家の農場の収穫物を加工した物です。ですが、街の他の店に卸している品と違って、ここで扱っている物は高級品ばかりなのです」
「へぇ……高級品ね……」
彼の詳しい説明に頷くと、商品が並べられている棚に視線を向ける。
ガラス瓶に入ったジャムや果実酒が並んでいるが……よくよく考えると、この世界だとまだガラス瓶だって安くはない。
それが、ボクが前世の高めのスーパーって印象を受けるほど当たり前のように陳列されているあたり、この店はかなりの高級志向なのかもしれない。
「ウチのお屋敷とか、他所の街へのお土産に買って行くことが多いそうよ。奥の方だともっといろんな種類の商品があるのよね?」
「ああ。肉を使った保存食品なんかもあるな。……貴族や裕福な平民の移動時の嗜好品として人気があるが、街で消費されることの方が多いな。値が張るのは確かだが、全く手が出ないって程でもないし、大事な客をもてなすために買って行かれる」
売り場を歩きながら、彼はお姉さんの質問に答えていた。




