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工房で仕立てたボクの仕事着は、どうやら複数着あるようで大きな木箱に納められていた。
頑張れば持ち運べるが、持ったまま街を歩くとなると邪魔過ぎるってことで、鍛冶工房に預けた槍と同じく、こちらも屋敷に運んでもらうことにした。
同じ街内だから負担はそこまでないのかもしれないが……贅沢な話だ。
ともあれ、槍の手入れを依頼したし、仕事着も受け取ったからこれで今日の街での用事は完了した。
再び工房の裏口から路地に出た。
表の通りは賑わっているようで、ここまで喧騒が届いてくるが……この裏路地は裏口から出入りする各店や工房の人間くらいしか見当たらない。
まぁ……まだまだ早い時間だし、もっと遅い時間になって、こちらが慌ただしくなるのは表の人波が途切れてからか。
「さて……と、これで用事は片付いたわね。これからどうしましょうか? 屋敷に戻ってもいいけれど時間がかかるわ。お嬢様はどこか行きたいところはあるかしら?」
お姉さんの言葉に、ボクは「そうですね……」と考え込む。
外での用事が終わっただけで、槍の手入れが完了するまでまだ二時間近く残っているし、今屋敷に戻ってもただそれを待つだけになってしまう。
まぁ……書庫から本を借りるって選択肢もあるが、折角街にやって来たんだし色々見て回るのも悪くはないだろう。
だが。
「折角だし歩いてみようと思うんですけど……どこに行きましょうか?」
どこに行くかを訊ねられたのに同じ質問を返すのはどうかと思うが……この街のことを知らなすぎるし、ここはやはりこの街で暮らすお姉さんに教えてもらおうかな。
「お姉さんのお薦めの場所はありますか?」
「私の? ……そうね」
お姉さんは腕を組みながら考え込んでいると、ふと顔を上げて路地の先を見る。
「お嬢様はまだ表の通りはほとんど歩いていないのよね?」
「はい。馬車に乗るか一緒に移動するか……後は工房まで行ったくらいです」
「わかったわ。とりあえず表通りに出ましょう。そこでお嬢様が気になったお店に入りましょう」
店を案内出来るほどボクの趣味や嗜好がわかっていないからだろう。
お姉さんはウィンドウショッピングを提案して来た。
「……大丈夫ですか?」
だが、前を軽く通ったことがあるだけだが、前世と違って気軽に出入り出来るような雰囲気ではなかった。
場所によっては入り口に警備が立っているし、我ながら怪しい姿のボクが入れるだろうか……と危惧していると、お姉さんは「大丈夫よ」と言いながら自分の胸を叩いた。
「こう見えても私は街じゃ結構顔が広いから、大抵の店ですぐに気付いてもらえるわ」
「なるほどー……それじゃあ、お任せします」
お姉さんは「任せなさい」と言って、ズンズンと路地の先に向かって歩いて行った。
◇
お姉さんを先導役にボクは中央通りを歩いては、何となく気になった店構えの店に入ったりを繰り返していた。
この辺りは中央広場に近い場所で行政区やお偉いさんの居住地にも近い。
そんな位置に店舗を構えられる店は大店ばかりらしく、扱っている商品もそれ相応の物ばかりだった。
大型の高級家具や宝飾品などだ。
ちなみに、ボクたちが先程までいた仕立ての工房も、お偉いさんの家や騎士団相手の制服などを仕立てているため、この通りに店舗を構えているんだとか。
しかし。
「私は楽しめているけれど、お嬢様はあまりしっくり来る物はなかったみたいね」
苦笑しながら前を歩くお姉さんが振り向いた。
「色々面白いとは思うんですけどね?」
村でボクが使っている部屋の家具は、結構いい物らしい。
あの家自体が、ビーンズ家のお客さん用に用意されているわけだし、中身だってそれに相応しい物を揃えているからな。
宝飾品も……正直興味はない。
それに、まだ処分していない群狼戦士団のお宝は残っているし、もし必要になればそこから見繕えばいいだろう。
お姉さんが案内してくれた店は、ちょっとボクとは相性というか……タイミングが合わなかったようだ。




