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工房に槍を預けたボクたちは、お次はボクの仕事着を受け取りに行くことにした。
向かった先は同じ商業区だが、街の外れに建っている先程の鍛冶工房と違って、仕立ての工房は街の中央通りに近い場所だった。
お姉さんが工房で話していたように、ここからだとまた工房まで行くのに確かに距離がある。
自分たちで受け取りに行くんじゃなくて、屋敷に届けてもらうようにしたのは正解だったか。
「ごめんくださーい。ビーンズ家のシェリルです」
仕立ての工房に到着すると、正面からじゃなくて裏口から中に入った。
裏口から入ってすぐのところに大部屋があって、そこが作業部屋らしかった。
作業机がいくつも並んでいて、そこでお針子さんらしき女性たちが忙しそうに仕事をしている。
同じくすぐ側に二階に繋がる階段があり、お姉さんはそちらに向かった。
工房に裏口から入った時に挨拶をした以外は全く会話をしていないし、誰からも呼び止められたりもしないんだが、ボクたちは街のお客さん……というよりは、取引先みたいな関係なんだろうか?
階段を上がりながらそんなことを考えていたが、それは正しかったらしい。
二階も同じく作業場になっているが、どちらかというと受け渡し用の服を保管する倉庫スペースって感じかな?
最後の仕上げなのかわからないが、作業机の上に広げられた服を前に針を手にしている者もいるが、バインダーのような物を持って棚の前に立っている者の方が多い。
そして、その棚の前の一人がバインダーを置くと、一抱えはありそうな箱を持ってこちらにやって来た。
「よう、シェリル。出来てるぜ!」
どうやら裏口から入ってくる時のお姉さんの声が聞こえたようで、既に用意をしてくれていたらしい。
彼はお姉さんの後ろにいるボクに気付くと、一瞬ギョッとしたような表情を浮かべたが。
「って、ちょっと変わっているが、この間一緒だったお嬢さんだよな?」
すぐにボクが何者か気づいたらしく、笑顔を浮かべた。
申し訳ないが、ボクは彼のことを覚えていないが……この様子だとあの時カフェに一緒にいた者だろう。
「ああ……ビーンズ家からにしちゃ変わった注文だと思ったが、お嬢さんの制服だったか」
そう言って大きな声で笑っているが、その彼にお姉さんが指を突き付けながら詰め寄った。
「ちょっと……いくら工房内だからってあんまり大きな声出さないでよ」
「悪い悪い。そうだよな……ビーンズ家で女性の護衛だなんて、リリアナ様のお付きだろうしな」
彼はボクが何も言わなくても、勝手に仕事着からボクが何者なのかを予想しているようだ。
とりあえず、彼の予想は当たらずとも遠からず……って感じかな?
「馬鹿なことを言ってないで……中身を確認させてもらうわよ?」
「ああ、その台を使ってくれ」
彼が台の上に箱を置くと、お姉さんは蓋を開けて中身を取り出していく。
お姉さんの陰に入ってハッキリとは見えないが、どうやら黒い生地らしい。
生地が何かは知らないが、亜麻色とかじゃなくてちゃんと染色しているあたり……思っていた以上にしっかりした服みたいだなと感心していると、横から彼が話しかけて来た。
「一応お屋敷から注文いただいた通りに仕立てているが、寸法を測ったわけじゃないから少し合わないところはあるかも知れないな。隣の部屋は空いているしウチでも出来るが……お屋敷でやった方がいいだろう?」
そう言って、ボクの頭の先から足の先まで視線が何度か往復している。
どこのサイズが合わないと思ったんだろうか?
「どうしますか?」
ボクはどちらでもいいんだが……お姉さんに訊ねると、手を止めて振り向いた。
「お屋敷の方がいいでしょう。それと……これはお屋敷まで運んで頂戴ね」
それだけ言い放つと、再び服のチェックに取り掛かった。
彼は「おう……」とだけ言うと、ボクを見て肩を竦めていた。




