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屋敷に到着すると母はそのまま自室に向ったが、ボクは応接室に通された。
ちなみに、御者のおじさんは前回のおじさんと同様で、今日はこのまま街に滞在するそうだ。
そして、明日の騎士団の巡回に合わせて村に帰還するとかで、馬車を本邸に停めるとウキウキで街に出て行った。
夜は村出身の者たちと会うそうだし、体のいい休暇みたいなものだな。
さて……それはそれとして、ボクは応接室でのんびりお茶を飲みながら待っていると、部屋のドアがノックされた。
「お嬢様、お待たせしました」
部屋に入って来たのは、前回ボクの案内を引き受けてくれたお姉さん……使用人のシェリルさんだ。
仮面を着けているボクを見て一瞬躊躇ったような素振りを見せたが、すぐ後ろにもう一人いるため、そのまま部屋の中に入ってくる。
「久しぶりだな。……その仮面がエリーゼ様から頂いた物だな?」
お姉さんの後から部屋に入って来たのは当主のマークだ。
お姉さんが妙にお淑やかな振る舞いをしていたのは、おじいさんがすぐ後ろにいたからか。
ボクは彼に「お久しぶりです」と返事をしつつ、仮面に手を当てた。
「白鉄製の良い物らしいですよ。……外しますか?」
「いや、そのままで構わん。今日は宿泊せずに村に帰るが、その前に工房で武器の手入れをしていくんだったな? リリアナから昨日報告を受けている」
「ええ。一応村でも軽くは手入れをしているんですが……戦闘で使ったりもしたし、いい機会かなって」
おじいさんの質問にそう答えると、「うむ」と深く頷いた。
「リリアナから以前頼まれていて、街の仕立て職人にお前用の仕事着を仕立てさせている。工房の帰りにでも立ち寄って受け取るといい」
「仕事着ですか?」
初耳だが……確かにボクは普段から今来ているような服のまま森や農場の警備に出て、場合によってはそのまま戦闘を行ったりしていた。
高価な布を使ってボク用に仕立てた服ってわけじゃないが、それでも安物ってわけでもない。
その仕事着だってわざわざ仕立てさせたのなら、それなりのお値段はするんだろうが……ボクの仕事を想定しているんだし普段着よりはずっと向いたつくりになっているはずだ。
「シェリルは覚えているな?」
おじいさんは部屋の隅に立つお姉さんを指した。
「ええ。前案内してもらいましたから」
「そうか。今日も案内に付ける。二人で行って来るといい」
チラッとお姉さんに視線を向けると、微笑みながら小さく頷いている。
「わかりました。お願いしますね」
「はい。お任せください」
お姉さんとのやり取りを見て、おじいさんは満足したのか部屋を出て行った。
そして。
「久しぶりね。元気にしていたかしら?」
「元に戻りましたね……魔物とか獣の相手をすることもありましたけど、元気ですよ」
部屋に二人きりになったところで、お姉さんは前回のような気安い口調になって、楽しげに笑っていた。
◇
「まだ屋敷に到着して碌に休憩もしてないけど……出発してよかったの? 話は通っているし、もう少しのんびりしてからでもよかったのに」
「街までは馬車の屋根に乗って来ましたからね。歩いたのは街に入ってからだし、全然疲れてないですよ」
ボクたちはあれからすぐに出発した。
お姉さんが言うように、急ぐ必要もないしもう少しゆっくりでも良かったんだが……わずかな差とはいえ、どうせなら武器の手入れは時間をかけて丁寧にやって欲しいし、これでいいだろう。
「それよりも、仕立ての職人さんの工房はどのあたりなんですか? ボクたちが今向かってる場所も工房とかが立ち並んでいる一画ですけど、ちょっと雰囲気が違いますよね?」
「そうそう。私たちの仕事着なんかはそっちの方でも作ってるけど、お嬢様が着るのは騎士団の制服とかを仕立てている工房よ。商業区の一等地だから、また別の場所ね」




