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母から街への護衛を頼まれた翌朝。
普段通り早起きをして早朝訓練を終えると、使用人や子供たちに今日はボクは街に出ることを伝えた。
使用人たちは母の生活形態にも慣れているからか、特に動じた様子もなく「気を付けて下さいね」と答えるだけだったが……困ったことに子供たちも似たような反応だった。
いや……親離れというか姉離れというか……村に馴染んで友達もたくさん出来たんだと思えば、決して困るようなことではないし、むしろ喜ばしいことなんだがどこか釈然としない思いだ。
これはボクが弟妹離れ出来ていないってことなんだろうか?
「いってきまーす!」とボクに向かって手を振りながら、子供たちは広場で待つ皆と合流するために家を出て行った。
これから農場に仕事に向かうんだが……実に楽しそうだ。
その様子を眺めながら「うーむ……」と唸っていると、おばさまたちが「どうしました?」と声をかけて来た。
「仕事に向かうっていうのに、皆楽しそうだな……と思って」
その言葉に「ああ……」と笑っている。
「村の子供たちも随分と楽しそうにしてますよ。今までは仕事の手伝いなんてどうやってサボろうか……って考えていたんですけどね」
「そうそう。ここの子供たちが楽しそうに手伝いをしているから、一緒に付き合っているうちに村の子供たちもそうなって来たみたいですよ」
「最近じゃ勉強も楽しそうですし……ありがたいことです」
同い年くらいの子供がいるおばさまたちが感謝の言葉を口にしている。
「なるほどー……」
まぁ、野営地にいた頃も手伝いはしてくれていたが……環境が極端過ぎるから手伝いの内容も随分と偏っていた。
死体を埋める穴を掘ったり、ごみを捨てる穴を掘ったり……諸々の処理をするための穴を掘ったり……。
洗濯をするために川に行ったり、野草の採集に森に行ったりを除けば、穴を掘るかごみを捨てるかくらいしか任せられなかった。
しかも、周りは傭兵たち荒くれ者に囲まれているから小声か黙ったままでだ。
それに比べたら、ふざけていたら叱られはするだろうが、基本的に自由に喋りながら外で走り回れる村での手伝いは楽しいんだろうな。
子供たちが出て行ったドアに視線を向けたまま「むむむ……」と腕を組んで唸っていると、さらにおばさまたちが続けて来る。
「それに、ジェイク坊ちゃんたちもお嬢様のお陰で最近は随分とまともになってきていますからね」
「本当に。次期当主は村長が継ぐことが決まっているけれど、その次はまだ決まっていないでしょう? リチャード様は騎士団のお役目があるし……もし村長に何かあったら坊ちゃんが上に立ちかねなかったもの。……良かったわぁ」
「でも、最近また夜に集まったりしてるんでしょう? 村長に叱ってもらわないと駄目よね……」
一応ジェイクの親戚筋で屋敷にも出入りしているボクの前でもこの遠慮のなさ。
何度もこの村の大人たちの話を聞いて分かってはいたんだが、ジェイク……彼は本当に駄目だったんだな。
◇
「それでは、お嬢さん。出発しますよ」
馬車の屋根の上に乗るボクに向かって、御者のおじさんが声をかけて来る。
「ええ。ボクはいつでもいいですよ。出発しましょう」
その声に、おじさんは馬のお尻を軽く叩いて馬車を走らせ始めた。
「お気をつけてー」
「村のことはお任せください!」
見送りに来た住民や、村の門を守る警備員たちにも挨拶をしながら、村を離れて街道へと出ていく。
「お嬢様、ほら……農場の方をご覧になって下さい」
ボクは森と街道の向こうの草原を警戒していたんだが、おじさんが後ろを見るように言ってきた。
「うん? あら……」
何事かなと振り返ると、子供たちがこちらに向かって手を振っている。
屋根の上に立ち上がると、ボクも両手で彼らに向かって手を振り返すと、元気な声を上げながら走り回っていた。




