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昼間の仕事を終えてから村に戻り、いつものように家で細々した仕事を片づけたりしながら夜になるのを待った。
そして、夜になって子供たちが寝るために二階の部屋に向かってからしばらく経った頃、ボクは昨日と同じように家を出るために一階で身支度をしていた。
だが。
「お嬢様……今日もおでかけですか?」
昨晩のおばさまとはまた違う人なんだが、昼間にでも情報を共有していたのか、使用人が咎めるような声で訊ねて来た。
「ええ。屋敷で勉強を……。ボクが帰って来なくても、上がってもらって構いませんので」
「……わかりました。お気をつけて」
彼女はいそいそと家を出ていくぼくを、溜め息交じりにそう言って送り出した。
……村に来た当初はもう少し敬われていた気がするんだが、気安い関係になったって考えるべきなんだろうか?
ともあれ、ボクは昨日同様屋敷に向かって裏庭を早足で通り抜けた。
◇
屋敷に入ったボクは、まずは使用人に声をかける。
事情を話そうと思ったんだが……昼間のうちにジョンは使用人たちに説明をしてくれていたようで、すぐに二階に案内してくれた。
こちらもスムーズだし……昨晩のようにジェイクと遭遇することもなかった。
途中で軽く使用人にジェイクはどうしているのかを訊ねたが、どうやら今日は屋敷にいるらしい。
昨晩の件でジョンから一発殴られていたし、流石に大人しくしているか。
さて、それはともかく……まずはジョンたちの部屋に向かった。
「こんばんは。本を見せて貰いに来ましたよ」
中に入ると、ジョン夫妻がリビングで寛いでいた。
ジョンはボクが来るのを待っていたようで、テーブルの上に置いていた辞書程度の大きさの木箱を渡してきた。
「中に鍵が入っている。一つは書庫の鍵で、もう一つはその中にある帯出禁止本の棚の鍵だ。管理人は今日はもう家に帰っているから、自分で開錠をしてくれ。場所は……案内を頼めるか?」
ドアの隣で待機していた使用人に声をかけた。
「わかりました。案内するだけで構いませんか?」
「ああ。いいな? アリス」
「ええ。ありがとうございます。……特に注意点とかはないんですか?」
「基本的に今まで通りの扱い方で構わないが、書庫を出る際には施錠はしっかりやってくれ」
屋敷の本自体は今までも借りていたし。あの扱い方でいいんだろう。
施錠に関してももっともなことを言っているし、特に気を付ける必要はなさそうだな。
ボクは「わかりました」と短く返事をすると、いそいそと部屋を後にした。
◇
お目当ての書庫は、二階の一番奥にあった。
二階で暮らすビーンズ家の人間以外は利用しづらい位置だが、街の本邸と違ってこちらは基本的にお客さんを招くことはないし、問題ないんだろう。
「それでは、私はこれで失礼します」
「はい。ご苦労様です」
案内を終えて仕事に戻る使用人に礼を言うと、ボクは先程預かった鍵を使って中に入った。
ボクが集会所などで読んでいる本は、全部が全部というわけではないがここから持って来た物も多いんだが、いざこうやって中に入るのは初めてだ。
「黴臭かったりしたら嫌だな……って思ってたんだけど、そんなことないね。しっかり掃除されてるし……整頓もされてる。それに、結構広いね。蔵書も多いし……立派なもんだ」
前世の図書館はもちろん学校の図書室にだって遠く及ばないが、教室二部屋分ほどの広さの部屋にビッシリと本棚が並び、そこに隙間なく本が収められている。
「もっとも、書庫内で本を読むようには造られてないみたいだね。持ち出しが前提なのかな?」
本棚が多い分机などを並べるスペースはない。
「ただ、帯出禁止の本もあるし……奥は別なのかな?」
書庫の中を進んで行くと、奥にもう一つ鍵の付いたドアを発見した。
そこが目的の部屋みたいだな。
ボクはもう一つの鍵を手にすると、ドアに向かっていった。




