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魔力を体にも槍にも込めて手加減なしの一撃を木に叩きつけると……目の前の木がへし折れた。
「っ!?」
同時に槍の柄が軋み、ボクの腕もへし折れそうな痛みが襲って来た。
ヨーゼフが数発要した以上の威力を、今の一振りで引き出したんだが……その分こちらへの反動も相当なものがある。
強化しているボクの体でもかなりきついし……これは駄目だな。
「大丈夫か?」
槍を下して両腕を互いにさすっていると、ヨーゼフが苦笑しながら腕の様子を訊ねて来た。
この分だとこうなることは予想していたのかもしれない。
「折れるかと思った……」
「反動を分散する防具も何も付けなければそんなものだろう。しかし……見事な一撃だったな。複数のゴブリンを一振りで仕留めたとは聞いていたが、この太さの木を一振りで折れるとは思わなかった」
ヨーゼフは折れた木を移動させるように指示を出すと、今度はジョンに顔を向けた。
「村長殿。これでも彼女の実力に何か不安がありますか?」
「む……」
「おや? アリス団長の実力を確かめたくてここに残ったのではないのですか?」
その言葉に、ジョンは面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「お前たちの働きぶりを見に来ていたのも確かだが……機会があればアリスの力を直に見たいとは思っていた」
「そうなんですか?」
「ああ。お前が魔獣や獣……魔物を倒していることは知っているが、私自身はまだ直接見たことがないからな。森に入りたいと言われても、許可は出せん」
ジョンにボクが戦う姿を見せたのは……ジェイクを斬った時だけだったかな?
これだと確かにボクがどれくらいの能力があるのかはわからないし、判断のしようがないわけだ。
ジョンの本心はともかく、何だかんだ公平であろうとしているんだろう。
「今のでお前が並の魔物なら一撃で倒せる力があることはわかったが……まだ森の中を安全に移動出来るかわからない。資料の閲覧は許可するから、しばらくは大人しく勉強でもしていろ」
ジョンは見学はもう十分なのかボクの返事を待たずに、「戻るぞ」と言ってきた。
どうしたもんかなとヨーゼフに視線で伺うと。
「こちらはもう少し間引いておきたいし、切り倒した分を運んでしまいたいからな。アリス団長、村長殿の護送は君だけでいいな?」
「構わん。戻るだけだ」
ボクの代わりに答えてしまうジョン。
ジョンの先程の言葉はもっともだし、ここは大人しく言うことを聞いておこう。
「……了解」と答えると、前に立って歩き始めた。
◇
ジョンと村に戻ると、ボクは再び農場の警備に戻った。
裏の森に向かう前と同様で、ボクは建物の屋根の上に陣取って全体を見ていた。
先程はジェイクたちはいまいち警備に集中しきれていなかったが、どうやらボクが離れている間にちゃんと切り替えたらしく、真面目に警備を行っている。
街道を通る者はいても怪しい素振りを見せる者はいないし、草原には獣の姿もない。
農場の外はジェイク一派たちに任せて大丈夫だな。
そして、農場内のウサギやモグラの巣は潰して回っているし、今更ボクがやることはないはずだ。
ボクはこのまま屋根の上で待機でいいだろう。
だが。
「……監視用に、屋根付きの櫓とか建ててくれないかな」
日差しがそんなにきつい時期ではないし、今更日焼けを気にするようなこともないが……仮面を着けているからな。
鼻から下だけとか、変な日焼けの仕方とかしたら子供たちに笑われてしまう。
治癒魔法で治せたりするんだろうか……?
「下から籠でも借りて来ようかな」
幸いこの建物は倉庫も兼ねていて、色々道具が中に収められているし、それくらいあるはずだ。
とりあえず、晴天の中ずっと屋根の上にいたら、日焼けだけじゃなくて髪の毛もボサボサになりそうだし……空いてる籠でも被って日差しを凌ぐことにしよう。
ボクはそう決めると、屋根の上から飛び降りた。




