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「アリス団長……それに村長殿も!? 村で何かありましたか?」
ヨーゼフは近づいて来るボクたちに気付くと、振りかぶっていた斧を下してこちらに駆け寄ってくる。
周りで切り倒された木の枝を切り落としたり、その木にロープをかけたりしていた傭兵たちも、道具を地面に置くと武器に手をかけた。
思えば案内してくれた傭兵たちも作業の邪魔になるだろうに、ちゃんと武器を携帯している。
昨日の反省が活きているんだな。
「森の状況と、拠点建築の進捗具合……それと、傭兵たちの様子の確認に来ただけだ。昨晩話は聞いていたが、私自身の目で確かめる必要もあるだろう?」
ボクが皆の恰好を見て感心している間に、ジョンはヨーゼフに用事を伝えていた。
そういえば、ジョンが何をしにこっちに来ようとしていたのか聞いていなかったが……そういうことだったのか。
進捗はともかく、傭兵たちの様子は直接見ないとわからないだろうしな。
……彼の目にはどう映ったんだろうか?
「ふむ……私はここでの作業が残っていますが、引き返しますか?」
ヨーゼフは話があるのなら拠点か……あるいは村でと言いたいのか、そちらに視線を向けるが、ジョンは首を横に振った。
「いや、人数もいるしこの場でしばらく見学させてもらう。アリス?」
「ええ……ボクは構いませんよ」
ここに来るまでは随分おっかなびっくりとしていたのに、慣れたのか開き直ったのかはわからないが、ここに留まるつもりらしい。
農場の方をジェイクたちに任せたままってのはちょっと気にはなるが、何かあれば村で合図があるだろうし、そうなったらボクだけでも真っ直ぐ戻ればいいだけのことだ。
森の様子を気になっていたのはボクもだし、ジョンが満足するまで付き合おう。
◇
切る木を選んでいるのは傭兵の一人で、どうやら密集して生えている木ばかりを切っている。
選ぶ基準は、視界が通りやすくなることと、乾燥させて後々村で使えるように……ってことらしく、随分とまばらに選ばれていて、そこら中に木が転がっている。
森自体はそこまで荒れているわけじゃないが、拠点に近付くにつれて緩い坂のようになっているから、そこを運んで行くのが大変みたいだ。
強化を扱える者を一人は入れているんだが、どうやらボクやカイルたち程得意じゃないようで、どこまで負担が軽減されているかはわからない。
いっそ他に使える者も全部集めてしまえば楽なんだろうが……拠点の防衛に残しているらしい。
まぁ……本命はそっちで、必須でもないこっちの作業に振り分けることではないよな。
それよりも。
「はあっ!」
ヨーゼフが気合の声と共に振りかぶった斧で切りつけると、大人の男性でも腕が届かないほどの太さの幹の三分の一近くまでめり込んでいく。
一振りごとに集中しているのか、テンポは決して速くないが……三振りか四振りで切り倒しているってことを考えると、相当なペースだろう。
ちゃんと選ばずに手当たり次第に切ってしまうと、あっという間にこの辺の木が無くなってしまいそうだ。
感心しながら眺めていると、ふとヨーゼフが斧の柄を向けながら話しかけて来た。
「アリス団長。君もやってみるか?」
「む? ボク?」
「ああ。君の強化はかなりのレベルだが、魔物や獣の相手はしてもこういったことを試したことはないだろう?」
「まぁ……それはそうだけど」
野営地で暮らしていた頃から強化の訓練は行っていたが、あくまで自己流な上に周りに隠れてだったから、こんなことを試そうだなんて考えたことがなかった。
「好きにしたらいい」
ジョンに一度視線を送ると、そう返って来た。
それじゃー……折角だし試してみようかな?
だが。
「コッチの方が使いやすいし、斧はいらないよ」
ヨーゼフが差し出してきた斧を断ると、ボクは木の前で槍に魔力を込めた。




