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「……ジョンさんか」
近付いて来たことで、それが誰なのかハッキリとわかった。
護衛を連れて歩いているってだけで予想は出来ていたが……やはりジョンだったか。
でも、何をしに来たんだろうか?
「お? ジェイクたちも気付いたみたいだね」
まずは村の入口に近い位置に立っていた取り巻きの一人がジョンに気付き、そして彼がジェイクにそのことを大声で伝えた。
さらに、それを聞いた作業中の住民がジョンに気付き……後は連鎖的に農場の皆に伝わって行く。
だが、手を止めてジョンの下に集まろうとする皆を、彼は止めている。
どうやら農場に用事があって来ているわけじゃなさそうだ。
「親父! どうしたんだ? アンタがここに顔を出すなんて珍しいじゃないか」
駆けつけてきたジェイクがジョンに訊ねると、彼は足を止めずに答える。
ジェイクに用があるってわけでもない……と。
そうなると。
「ここは別の者に任せているからな。わざわざ私が出てくる必要はないだろう。だが……」
歩きながらジョンは誰かを探すように農場のそこかしこに視線を這わせているが、お目当ての人物は見つけられていないようだ。
それはそうだろう。
「ジョンさん、ボクならここですよ!」
屋根の上からジョンに向かって声をかけた。
「おおっ!? そんなところにいたか。アリス! 済まないが降りて来てくれ!」
やはり彼が用がある相手はボクだったか。
まぁ……農場でもジェイクでもないならボクくらいしかないし、そんなに勿体ぶるようなことでもないか。
何の用事かわからないが、一先ず屋根の上から飛び降りると彼の下に駆け寄った。
◇
「お前は仕事も屋根の上でやっているのか……?」
ジョンの下にやって来たボクに、彼はまずそう言ってきた。
ジョンが何の用事でここまで来たのかよりも先にそれを聞いてくるだなんて……よほど気になったんだろうか?
「高い位置からの方がよく見えるでしょう?」
ジョンにそう答えると、隣で聞いていたジェイクが肩を竦めながらボヤく。
「外は俺たちも警戒しているんだがな」
確かに普段は彼らも仕事をしているが……。
「今日は別のこと考えてたでしょう? そんなんじゃ任せられないよ」
図星をつかれたのか、ジェイクは「うっ」と呻き声をあげ、ジョンがジロリと睨みつける。
このままお説教に発展しそうな雰囲気だが。
「そんなことよりも、何の用事なんですか? ジェイクじゃないけど、ジョンさんがコッチに来るなんて珍しいみたいですけど……」
ボクが農場の警備をするようになって、ここにジョンが顔を見せたのは最初の数日だけだ。
それ以降は彼がここに来たことはなかった。
まぁ、何故足を運ばないのかってのは彼自身が先程口にしていたし、その理由は納得出来るんだが、だからこそ何をしに来たんだろうか。
「ふむ……。裏で建設中の拠点に用事がある。護衛を頼めないか」
「ボクに? ……わかりました」
昨日はアッチで色々あったし、直接ジョンも見に行っておきたいんだろう。
んで、その為には護衛も兼ねてボクを連れて行く方が都合がいい。
そのためにも。
「ちっ……わかったよ。俺もアイツらも気持ちを切り替えておくから心配すんなよ」
ジェイクをジッと睨みつけると、彼も多少は反省しているのか、いくらか申し訳なさそうな表情を浮かべてそう言ってきた。
「……頼むからね? じゃあ、行きましょう」
「うむ。私は塀を飛び越えられないから、歩いて行くが……私に合わせてもらうぞ?」
歩き始めながらボクに釘をさしてくるジョンに、苦笑しながら「わかってますよ」と返事をした。
そっちの方が早いってだけで、別に歩くのが嫌いってわけでもないし、どうしても塀を飛び越えたいわけでもない。
まぁ……村の農場と裏手側にも門があると便利だな……とは思っているけどね。




