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エリーゼ様は一通り槍の型らしき動作を準備運動がてら行ってから、ボクの前にやって来た。
槍を構えると、ボクに打ち込んでくる場所を指示していく。
それに合わせて木剣を振っていくと、エリーゼ様も同じくボクの打ち込みに合わせて槍を振っていく。
この説明だと普通のお稽古……って感じに思えるだろうが、実際はお互いに魔力で強化をしていて、しかも徐々に強化の度合いを強めて行っているから、中々激しい打ち合いになっている。
木剣も木槍も折れかねない威力だと思うんだが、上手いことエリーゼ様が加減をしてくれているようで、十分近く続けているが未だにどちらも無事だ。
だが……。
「これ以上はもう折れてしまいますね。終わりにしましょう」
エリーゼ様は槍をクルっと回して穂先を地面に向けると、構えを解いた。
「はーい」と返事をすると、同じくボクも木剣を下した。
一人でも剣や槍を振ることは出来るし、魔力で強化することも出来るが、相手がいる方がずっと実のある訓練が出来ている気がする。
ジェイクたちとの溝を埋めるために提案したエリーゼ様の訓練参加だったが、これはボクにとってもいいことかもしれないな。
初めての人と一緒に魔力を使った訓練に満足していると、訓練をしていたはずのジェイクたちが集まっていたことに気付いた。
どうやら、自分たちの訓練よりもボクたちの訓練を見学していたらしい。
ボクたちの邪魔をしないようになのか構えを解くまで待っていたジェイクが、エリーゼ様に「なあ」と声をかけた。
「どうしましたか? ジェイクさん」
「……アンタたちがやっているその強化は俺たちでも出来るのか?」
「魔力は所有量の差はあっても誰にでもあるものですからね。訓練次第では出来ますよ」
その言葉にジェイクたちが沸き上がったが、宥めるように「ですが」と続ける。
「私は幼少時から魔力の訓練を始めていたから、身に着けることは難しくありませんでしたが、簡単なことではありませんよ? 折角騎士団に入団しても、この訓練を乗り越えることが出来ずに去って行く者がいる程ですからね」
そして、どのような工程を踏むのかを話し始めた。
どうやらボクが思っているよりも、魔力の強化や操作はずっと難しい技術なのかもしれない。
ボクは何となく気付いたら魔力を認知していたし、適当にソレをいじっていたら扱えるようになっていた。
前世があって、さらに身に着けやすい環境にあったっていう……要は偶然だ。
だが……通常だとまずその段階で躓く者も多いようだ。
まぁ……確かに、荒事が専門の傭兵連中ですら魔力を扱える者は少なかったし、そう考えると、その難易度の高さも納得だ。
ジェイクたちは真剣な表情でエリーゼ様の話を聞いているが、果たしてどうなるのやら。
ボクはクールダウンを行いながら、彼らの様子を眺めていた。
◇
早朝訓練を終えた後は、食事をとってお仕事だ。
今日のボクの仕事は農場の警備で、槍を片手に子供たちと農場に向かった。
もちろんジェイクたちも農場の警備は行っている。
ボクのポジションは、農場の所々に建っている建物の屋根の上だ。
そこから全体を眺めている。
だからこそわかるんだが……ジェイクたちは今朝のエリーゼ様が話したことについて考えてでもいるのか、仕事に身が入っていないようでどうにも危なっかしい。
「見た感じ……農場に近づいて来るような素振りを見せる人間も獣もいないからいいけれど、仕事を放棄しちゃうのはよくないね」
農場で働いている住民たちは、柵の外にいる彼らの様子は見えていないみたいだが、だからといってアレを許したら駄目だろう。
ここは、一言注意をした方が……と、下の様子を眺めていると。
「うん?」
村の方からこちらに誰かが歩いて来ているのが目に入った。
二人いてそのうち一人は槍を持っているし、護衛かな?
そうなると……。




