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村の裏手の拠点を魔物や獣に襲撃をされた翌朝。
もはや日課となっている早朝訓練のために裏庭に出て来た。
既にジェイクやその取り巻きが集まっていて、的や宙に向かって木剣を振っているんだが……。
「……どうしたの? その顔」
ジェイクの目の周りに青黒い跡が出来ている。
まるで誰かに一発貰ったような顔だ。
ジェイクはボクの質問にムッとした様子で、「大したことねぇよ」と返してきた。
どうやら、一発貰ったみたいだ。
ジェイクの顔を殴れる者というと、身分的にも能力的にも大分限られている。
「……ジョンさんかな?」
母も出来るかも知れないが、母は殴るよりも引っ叩くってイメージの方がしっくりくるし、ジョンって考えるのが妥当だろう。
ジェイクは小さく舌打ちをしたが、答えずに黙って木剣を振っている。
正解だったか。
そうなると、お次はなぜ殴られたかか。
「昨日騒ぎ過ぎたことを叱られたのかな?」
「うるせぇよ……」
これも正解か。
誰かから聞いたのか、あるいは屋敷の使用人が騒ぎを聞きつけたか……何にせよ、この様子だと今日以降は流石に夜遊びは控えるかな?
◇
ボクが裏庭に出て来てから間もなくして、もう一人新たに訓練に参加する者がやって来た。
昨日話していたエリーゼ様だ。
スカート姿ではなく、上は長袖のシャツで下はパンツ姿で槍を手にしている。
さらに、足元は膝までのブーツとかなり動きやすそうな恰好だ。
「お早うございます」
今朝から参加するとは思っていなかったが、ボクは一応話していたし知っていたから驚きはしなかったが、ジェイクたちはそうじゃない。
揃って剣を振る手を止めると、エリーゼ様を見て「っ!?」と目を丸くしている。
「アリスさんには昨日話しましたが、今日から私も参加させてもらいますね?」
その言葉に、目を丸くしていたジェイクたちが揃ってボクを見た。
「おいっ!? いいのかよ、アレ」
「いいのかって言われても……ジョンさんにも特に止められていないし、そもそもこの訓練って勝手に集まってるだけだよ? それに、エリーゼ様だって一応ウチの団員だからね」
ジェイクが何を言いたいのかはわからないが、とりあえずエリーゼ様の参加を拒否する理由がボクには無いことを伝えた。
「まあ……確かにそうだが……いいのか? 領主のお嬢様だろう?」
「結構戦える人だし大丈夫だよ。エリーゼ様、ボクたちは勝手に集まって勝手に訓練を行っているだけなので、特に何をするって決まりはありません。やりたいことを好きにやって下さい」
「ええ。わかりました」
エリーゼ様はそう言うと、ジェイクたちから少し離れた場所に移動して、槍を振り始めた。
一振りするたびに風を切る大きな音が聞こえてくる。
彼女の見た目からだと想像出来ないような威力が込められているんだろう。
つまり。
「なあ、あのお嬢様も魔力を扱えるのか?」
ジェイクもエリーゼ様が体を魔力で強化していることに気付いたようだ。
「うん。魔力量はボクの方が上だと思うけど、技術や知識はエリーゼ様の方がずっと上じゃないかな?」
「……マジかよ」
「まだまだ魔力を扱えないみたいだけど、見るだけでもいい勉強になるんじゃない?」
「…………わかった」
随分と不承不承ではあるが、ジェイクはそう答えると取り巻きを一旦呼び寄せて、何かを話し始めていた。
一方エリーゼ様は、ジェイクたちの視線が消えたことに気付いたのか、槍をクルクル回転させながら「アリスさん」とこちらにやって来た。
「お早うございます。どうしました?」
「体をほぐし終えたら、少し付き合ってもらえませんか? 折角ですし、真面目に訓練を行おうと思うんです」
「どんなことをするのかわかりませんが……いいですよ。何をするのか教えてくださいね」
騎士団仕込みかはわからないが、ボクたちの自己流の訓練よりかは身になるかもしれないし……勉強させてもらおう。




