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とりあえず騒ぎになっちゃいけないし、黙らせるためにも彼らの下に行こうかと身を乗り出したが。
「……団長か?」
武器の代わりに酒瓶を振りかぶっていたジェイクが、ハタとその腕を下した。
どうやらボクだと気付いたらしいが……月明り、星明りしかないのによくわかったもんだ。
「団長……アリスさんなのか?」
「でも……人間には見えないわよ?」
彼らはボクだと気付けなかったようで、後ずさりながらジェイクに声をかけている。
だが、それをジェイクの取り巻きたちが遮った。
「影だけ見たらそうだが……魔物はあんな光り方しねぇよ」
「そもそも魔物ならあんなとこで呑気に見下ろしてこないしな。団長殿! 一緒にどうですか?」
呑気に見下ろして……と言っているが、彼らも人のことは言えないだろう。
ボクに向かって酒瓶や杯を掲げている。
こっそり溜め息を吐くと、ボクは手のひらの上に明かりの魔法を浮かべながら彼らの前に飛び降りた。
魔法と、屋根の上から簡単に飛び降りて来たことに驚いたのか、彼らは「おおっ!?」と声を上げている。
ジェイク一派はともかく、他の連中はボクとは絡みがないし……無理もないかな?
「魔法か……随分簡単に扱うんだな」
「これは初歩の魔法らしいよ。魔力が扱えたら、すぐに出来るんじゃない?」
「剣を振るってりゃ身に着くってわけじゃないんだろう? 使えた方がいいのはわかっているが……今はまだ後回しだな」
意外と堅実なジェイクに驚きつつ、ボクは彼らが何をしているのかを訊ねた。
「大したことじゃねぇよ。仲間と明日の警備の打ち合わせをやったり……親父たちへの仕事の要求を纏めたりしているんだ」
「……意外と真面目なことやってるんだね」
思ったよりもまともな返答に驚いて、ついついそのまま口に出してしまった。
何人か馬鹿にされたと思ったのか、ムッとしたような表情を浮かべているが……ジェイクは気にしていないのか、肩を竦めるだけだ。
「昼間はどこにいても大人の目があるからな。……俺たちが羽目を外せるのは夜くらいだろう?」
「……そうなのかな?」
そんなこと言っているが、そもそも取り巻きを引き連れて村の中をうろついて、住民から反感を食らっていたのは当の自分だろうに……。
そう思いつつも、今度は口に出さないように堪えることが出来た。
ジェイク一派はともかく、この村の中だけだと何時だって人の目があるし、若者にとっては窮屈なのも確かだろう。
改めて彼らの顔を見るが、年齢はボクより少し上くらいの者ばかりだ。
前世のように、気軽に遊びに出かけてストレス発散ってことも出来ないだろうし、夜にちょっとお酒を飲みながら愚痴を掃く場は必要なのかもしれない。
ただ。
「まぁ……その辺りに関してはボクは何も言わないけど、あんまり騒ぎ過ぎないようにね。屋敷の裏にまで聞こえていたよ。村の外にも届いちゃうかもしれないよ?」
「ん? ああ……裏の森で連中が何かと戦ったんだったか? わかった。気を付けよう。お前ら! いいな!?」
周りに示威するためなのか、それとも単純に酔っぱらっているだけなのかはわからないが……言った側から広場中に響くような大声でジェイクが叫ぶと、同じく回りも大声で返事をした。
そして何がおかしいのかゲラゲラと笑いだす。
「酔っぱらってるか……」
ボクが呆れていることに気付いていないのか、ジェイクたちは「団長、アンタも飲むか?」と言って酒瓶をこちらに突き出してきたが、手で突き返した。
ちなみに、ボクが知る限りだと飲酒の年齢制限はないから、別に飲んだところで誰かに咎められるってことはないんだろうが……前世でも飲酒経験はほとんどなかったし、今生でもボク自身の判断で飲酒は避けている。
それを抜きにしても。
「ほどほどにするんだね。何かあってもボクは庇わないし、助けないよ」
お仲間だと思われたら困る。
ここはさっさと退散してしまおう。




