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母との話は、まずまずの結果に終わったと思う。
今日起きた外の出来事や、ボクの要望をしっかりと伝えることが出来た。
まぁ……森の探索については、母の一存で決めることは出来ないようだったし、ジョンの返答待ちではあるが……それは仕方がないだろう。
もしボクが何かミスを犯して、それが原因で村を魔物が襲う……なんてこともありえなくはないわけだし、ジョンの考えが決まるまでも時間がかかるかもしれないが、ある意味ボクにとっては丁度いい時間だ。
裏の森の様子も魔物の情報も全く知らないし、空いた時間を使ってしっかり勉強をさせてもらおう。
さて、話も終わったし家に戻ろうかと席を立つと、腕を組んだ母が「寄り道せずに戻るのよ」と言ってきた。
「わかってますよ」
そもそも裏口から裏庭に出てすぐ家なのに、どこに寄るんだろうか?
その考えが表情に出てしまったのかもしれない。
母はさらに続けて来た。
「最近、ジェイクがまた気が大きくなっているとジョンがボヤいていたわ。貴女に絡むようなことはないでしょうけれど……」
「屋敷に入ってすぐに玄関のところで会いましたよ。酒瓶持って出かけるところでした」
告げ口みたいな形になってしまったが、出かけるジェイクを見たことを伝えると、母は大きく溜め息を吐いた。
「まあ……そういうことよ。貴女は大人しくしておいて頂戴」
「わかってます。今日はもうこれで帰りますけど、明日からは資料を読むために夜に来ますね」
「ええ。……今日はご苦労様」
ボクは、母の珍しい労いの言葉を背に、エリーゼ様と共に部屋を後にした。
◇
「…………うん?」
裏口から裏庭に出て、家に向かってトコトコ歩いていたが……村の広場の方から男の声らしきものが聞こえて来た。
「ジェイクたちか。……喧嘩をしているってわけじゃなさそうだし、お酒を飲んで盛り上がってるのかな?」
暴れているわけじゃないし、母が危惧していたような感じじゃなさそうだが……随分と大きな声だ。
「ここまで聞こえて来るってことは、聴力がいい獣なら聞こえちゃったりするのかな? ……無視するわけにはいかないか」
寄り道をするなとは言われていたが、これは放置していたら危険かもしれないし、パパっと行って一言注意しておこう。
「……ふっ!」
足に魔力を込めると、一気に広場に向かって走り出した。
近付くにつれて、喋っている内容まではわからないが、声の主がジェイクたちであることはわかる。
……というよりも、他には全く物音が聞こえてこないし、今村で出歩いている者はボクを除けば彼らだけのようだ。
その割に、聞こえてくる数は随分多い気がする。
いつものジェイクの取り巻きだけじゃなさそうだ。
「おばさまも渋い顔をするわけだね。よい……しょっ!」
ボクは大きくジャンプをして、広場に面して建っている建物の一つの屋根に飛び乗った。
集会所の向かいに建っていて、何かの作業をするのに使っている建物で、今は中には誰もいないはずだ。
とはいえ、足音を立てないように気を付けながら屋根の上を小走りで広場を見下ろせる場所に向かった。
そこから広場を見下ろすと、十数人の男女が荷台をテーブル代わりに酒盛りをしている姿がある。
「……結構いるね。それも女性まで」
思ったよりも健全ではあるが……だからこそ却って気になる。
別に外で集まらなくても、適当な空いた建物を開ければいいのに、なんでわざわざ……と、屋根の上から彼らの酒盛りを見下ろしていた。
一先ずもう少し声を落とすようにと言うために、屋根から身を乗り出したんだんだが、それが良くなかった。
「……ひっ!?」
たまたま上に視線を向けた一人がボクを見て驚き、こちらを指しながら悲鳴を上げた。
「どうし……っ!? 魔物か!?」
「ジェイクさん!?」
「ヤロウっ!! 手前らはさがれっ!!」
屋根の上のボクを見て、ジェイクがやる気になってしまった。




