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ひとしきり二人への説教を終えたマークが席に着くと、ジャックがその場で立ち上がり話を始める。
「皆が揃ったし話を始めよう。議題は魔獣除けの分配についてです。製作するための素材は、群狼戦士団の新団長アリスが仕留めて来た三頭の魔獣です。既に街の工房に運んで、薬品の製造に取りかかっていますが量に限りはあります」
そう言うと、代官の代理人として来ている男に話を向けた。
「その作業を担当するのは工房はグラス家が運営するラカンパ薬品工房です。今までの実績からどの程度製造出来るかはある程度判明していますが、正確な情報ではありません」
そう前置きをすると、話を続ける。
「まずはビーンズ家に、運営する農場に必要な分を分配します。これでおよそ三分の二を使います」
彼の言葉に、集まった者たちは同意を示す。
「まあ……仕方ないだろう」
「そこに被害が出たら街や周辺の人間の食糧事情に大きく影響するからな」
「そもそもアリス団長はビーンズ家の人間でもあるわけだしな。そこに不満はない」
ビーンズ家の農場は、ラカンパの街やその周辺の村の食料に加えて領内の馬や家畜の飼料も作っている。
現状でも対応は出来ているが、それでもより確実に作物を守るためには薬品の力に頼った方がいいのは皆も理解出来ている。
「それでは、残りの三分の一についてです。各家も農場を持ってはいますが、ビーンズ家に大きく割くため考慮に入れません」
その言葉に、不承不承ながら同意する。
「もういい。どこに回すかは大体わかったし、さっさと結論を言ってしまえ。もう決めているのだろう?」
「先生とジャックが決めたのなら今更異を唱えたりはせんよ」
「今回分配される家は街の薬品は控えるんだろう? その分について話す方が建設的じゃないか?」
自家が配分漏れだと悟った者たちが、溜め息交じりに先を促していく。
「失礼しました。それでは、郊外に特に倉庫を持つゴール家と周辺への販売網を持つメタル家に分配します。ビーンズ家に比べると二家にも関わらず量は少ないですが、森から距離がありますし十分だと判断しました。いかがでしょうか?」
そう言うと、その二つの家の当主に視線を向けた。
一人は外で揉めたことで遅れて部屋にやって来た二人のうちの片方で、その彼が大きく頷いた。
「構わん。ウチの倉庫には警備の者も置いている。襲撃の頻度を抑えられるだけでも十分だ」
満足気に答えるゴール家当主に対して、もう一人であるメタル家の当主は少々困惑気味だ。
「我が家を入れてくれるのはありがたいがどう動いて欲しいのだ? 商隊の立ち寄り先の厩舎に使いたいとは思っていたが……それでいいのか?」
「ええ。それで構いません。……今回の件も踏まえて騎士団や傭兵を街道の巡回に回すので、恐らく護衛を外から雇うことは難しくなるでしょう。そのためメタル家にはラカンパの街周辺の村への分配業務も任せたいのです」
「ふむ……一時的なものではあるが、例年に比べると村の防衛力が落ちるか。わかった。ウチの人間たちにもそう伝えておこう」
その言葉に、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「それでは、次に工房で販売している分の薬品をどう分配するか……についてです」
◇
一通りの話が終わり、進行役を任されていた代官の代理人が席に腰を下ろすと、今度はマークが立ち上がった。
「今回の混乱の直接の原因は群狼戦士団の崩壊ではあるが、そもそもの原因はまた別にある。エリーゼ様の命かあるいは領地の混乱か……はたまた国の混乱か。ひと月経っても未だに判明はしていないが、我々は余計なことにかかわらず団結することが大事だ。良いな?」
生徒に言って聞かせるような口調で皆に向けてそう言うと、彼らも揃って「わかりました」と答えた。
それを見て満足そうに頷くと、今度は少々決まりが悪そうな様子で話し始める。
「今日リリアナに一通手紙が届いたのだがな……」




