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照明の魔法は弾けたところで熱も音も衝撃も何もないのは、先程何度も部屋で試したからわかっている。
ただ、込めた魔力の量によって弾けた際の光量は変わってくる。
今の一発は部屋で使った魔法の数倍の魔力を込めていた。
熱くなった頭を冷やすには十分だ。
「今のは何だっ!?」
「向こうから……うっ……!?」
光球が飛んで来た方を見た二人は、今度はそちらに向かって飛んで来るボクを見て後ずさる。
左手の上に照明の魔力を浮かべて高速で飛んで来る謎の女。
彼らからはそう見えているはずだし、「何だアイツ……」となるだろう。
「……何者だ。私を誰かわかっているのか!?」
「敷地内から来たということは、ビーンズ家の警備の者か?」
彼らから一歩離れた位置に着地したボクに、二人は揃ってそう言い放つ。
先程まで掴みかかって殴り合い寸前だったにもかかわらず、見事な気の合いっぷりだ。
これならすぐに争いを再開する……ってこともないだろう。
ボクは二人を無視すると、この屋敷の人間に視線を向けた。
とにかく、ボク絡みの問題で揉めていたし、大事になる前にどうにか収めよう……とだけ考えて飛んで来たんだが、どうやってこの場を収めるかってことは考えていなかった。
子供たちなら襟を掴んでお説教したらいいし、ジェイクたちなら適当に引っ叩けば大人しく言うことを聞くだろう。
でも、この人たちはどうやったらいいんだろうか。
周りの二人への態度や、今のボクに向けた態度から考えると、かなり地位の高い者なんだろう。
ボクがどう絡んでも揉める未来しか見えない。
ここは屋敷の者に丸投げだ!
「伝われ……!」と念じながら、ボクの唐突な登場にあっけを取られている屋敷の人間を睨んでいると、我に返ったのか二人の間に入り引き離していく。
「何だっ! お前たち!!」
抵抗しようとするが、あっさりと引き離されていく。
先程は二人を抑えることに苦戦していたが、アレは恐らく二人を怪我させないように加減していたからなんだろう。
「どうぞ、こちらへ!」
しっかりと二人の前に立ちふさがり、
改めて二人を見ると、中々お年を召した者たちだった。
祖父より上で……おじいさんより下ってところかな?
あの二人の間の世代なんだろう。
「くっ!? 何をする!!」
「まだ話は終わっておらぬぞ!!」
そう言って屋敷の人間たちを振りほどこうとしているが、さらに彼らの従者も加わって順番に屋敷の中へと連れて行った。
玄関前に残っていた警備員たちもホッとしたのか、構えを解いている。
「助かりましたお嬢様……」
「下手に手を出して怪我をさせては事なので、手を出しあぐねていたのです」
予想通りの答えだ。
「部屋まで声が届いてましたし、何となく事情は分かっています。ボクも全くの無関係……ってわけではなかったみたいですからね。……こういう場合って普段はどうしているんですか?」
「このようにもめること自体滅多にありませんから……。ですが、決して家同士が友好的とは言えない方々もいらっしゃいますし、普段は訪問の時間を順番をずらすことで鉢合わせしないようにしているのですが……今日はどちらも突発的な訪問だったため、ああなってしまいました」
「なるほど……」
必要だけれど足りないものが急遽手に入るかもしれないことと、友好的ではない家の人間がたまたま鉢合わせしてしまうことが重なるという、中々レアな事態だったのか。
「……他にまだああなりそうなお客さんは残っていますか?」
「そちらが訪問するかどうか断言は出来ませんが、思い当たる限りですと後二家あります。……ですが、今ので対処の仕方は学べました」
もし鉢合わせてしまったら、間に入って一気に引き離す。
そうするんだろう。
「そう? なら後は任せますね。中に入ります」
ボクは彼らにそう言うと、玄関のドアを開けるように頼んだ。




