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「幼馴染がグイグイ来るけど、お前もどうせフリなんだろ!」  作者: 替玉 針硬


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第6話「別れの真相」

彩葉の衝撃発言から翌日。

俺というと、今ちょうどクラスの面々に質問責めに遭っているところだ。


何故こうなってしまったか、だって?

それは、数分前の出来事だった。


「薬院さん!最近、天神くんと一緒にいないみたいだけど、なんかあったの?」

クラスの女子が、彩葉に質問をしている。

実際、俺と彩葉は一緒にいる時間がどんどん減っていた。

俺がなにかしているわけではない。

これは全て彩葉の判断であり、そこにどんな意図があるのか、巻き込まれキングの俺は知る由もない。


「てかてか、天神くんってとんでもないクズ彼氏って噂だけど、ホントなの?」

別の女子生徒がそんな質問をしているのが聞こえてきた。

影山くんを本気にさせるために彩葉が仕組んだ嘘だが、それなりに広まっていたようだ。


「いいえ、燦斗くんはそんな人じゃないわ。私のわがままに付き合ってくれる良い人よ」

……驚いた。彩葉の口から、そんな言葉が出てくるなんて。

俺のことなんて、利用できるだけ利用して切り捨てる使い捨てのホッカイロのような存在だと思っていたばかりに、彩葉のその言葉は俺に衝撃を与えた――が、これを機に彩葉に恋に落ちるような展開にはならないので安心して欲しい。あの女の本性を知っていれば、よほどイカれた男でないと付き合おうなんて思いはしない。俺はどちらかというと真由希の方が……いや、なんでもない。


「それで、私と燦斗くんに何かあったのかという質問だったかしら」

「あ、うん!もしかして……別れたの?」

「……ええ。実は、私たち別れたの。ね、燦斗くん」

教室が静まり返る中、彩葉が俺の方を見てウインクする。

美人にウインクされるような人生を送るなんて思ってはいなかったが、そのウインクに込められた意図に気づけないほど、俺は馬鹿じゃない。


「……あー、実はそうなんだ。俺たち別れたんだよ」

教室の静寂がどよめきに変わる。主に男子生徒たちの、だが。

実際、嘘は言っていない。俺と彩葉は偽りの恋人関係を昨日時点で解消している。

こうして、クラスの面々に知れ渡ったことで、ようやく薬院 彩葉という性悪女から解放されたような気がしている。


――というか、さっきから隣の席に居座っている真由希が目をキラキラさせているのが非常に気になる。

うーん、ここ最近の真由希の態度の変化も悩みの種だ。なぜ、いきなりグイグイ来るようになってしまったのか。目的はなんだ――ハッ!?まさか!そうか、そういうことか!


真由希も、俺を偽彼氏として何かのために利用しようとしているんだ!全く、なんてやつだ!

いや、おかしいと思ったんだよ。

すっかり疎遠になっていた真由希が、俺と彩葉の関係を知った途端、あんな態度を取り始めるもんだから。

そうか、納得した。

昨日のあの態度は……俺を誘惑していたんだ!

いくら幼なじみだからといって、やっていいことと悪いことがあるぞ真由希!

い、いや待てよ。

幼なじみだからこそ、俺を頼ろうとしてくれているのか?

……そうか、俺は可愛い幼なじみにとって、頼れる男のようだ。フハハハハ!


「あー、真由希?どうした?」

「良かったね!アキ!ホントに!」

「良かったね、はまずいだろお前……」

「あ、うん……そだね。ドンマイ、アキ!」

それもそれでだろう……と突っ込みたくなったが、めんどくさいので"おう"と相槌を売っておいた。


それから俺は、一部の男子生徒と女子生徒からの質問責めに遭ったが、その最中……特に女子生徒から質問を受けている時の真由希の視線がなんか怖くて、真由希の方をしばらく見ることが出来なかった。


その後、俺と真由希は彩葉を例の屋上階段の踊り場に呼び出して、話を聞くことにした。


「こんな場所に呼び出して、何かしら?復縁のお誘いなら、悪いけどお断りよ」

「誰が復縁なんかお願いするかよ。

それで、どうして急に関係を解消したんだ?」

俺が本題を切り出すと、彩葉は黙り込んだ。


「なんだ、なにか言えない事情でも抱えてるのか?俺に解決出来そうな事なら、相談してくれてもいいぞ」

「あら、優しいのね。やっぱり、ヨリを戻しちゃおうかしら」

「ちょ、ちょっと薬院さん!そんなのダメだよ!」

今度は自分が俺を利用する番だからか、真由希が彩葉の提案に強めに突っかかる。


「おい真由希、落ち着けよ……冗談に決まってるだろ」

「ふふ、流石ね。安心して高宮さん、もう燦斗くんを利用するつもりはないわ。利用価値がなくなったもの」

「なるほどな。それが理由か?」

「それだけではないわ。私にだって良心はあるの。優しい燦斗くんを自分のわがままに付き合わせていることに多少の罪悪感はあるわ。それに――なんでもないわ」

彩葉は、一瞬真由希の方をちらっと見た気がする。どういうことだろう。

俺の知らないところで、二人がなにか約束をしているのかもしれないな。全く、怖い話だ。


「とにかく、私はもうあなたに彼氏のフリをして、と頼むことはないから、安心してちょうだい。それに……ふふ、時間の問題だし」

彩葉が不敵な笑みを浮かべているが、その理由を聞くのが怖かったので俺はそっとしておくことにした。真由希の方をちらっと見ると、俺の方を見て頷いているので、同じ気持ちなのだろう。

さすが幼なじみ、俺たちは通じあっている。本当にそうか??


「ああ、それと、あなたに言っておくことがあるわ」

「ん、なんだ?」

「私の中学時代の後輩に大橋おおはし 愛衣あいという子がいるのだけれど」

「それがどうかしたか?」

「その子にだけはね、私が偽の彼氏を利用して上手いこと好きな人を振り向かせる作戦を実施したことを明かしているのよ」

「俺には秘密だって言ってたのに、自分は他の人にペラペラ喋ってたんかい」

「彼女は信用できるわ。まあ、そういうことだから。あの子からなにか接触があるかもしれないけれど、助けるかどうかの判断はあなたに任せるわ」

「え?助けてあげてちょうだい、とかそういう話じゃないのか?」

「私とは関係ないことだもの。だからあなた次第よ」

そういうところがコイツはドライだ。

だが、根っからの悪人ではないところが、タチの悪いポイントだ。


「私からの話は終わりよ。2人からはまだ何かあるかしら?」

「影山くん、これからどう動くと思う?」

「……私には、見えているわ。彼が私に愛の告白をする、その瞬間が」

なんだこいつ、予知能力者なのか?ここは異世界じゃないんだから、そんなファンタジー要素を持ち込むのはやめて欲しい。


「あ、そ、そうか……」

「薬院さん、ひとつだけ!」

「なにかしら?」

「もう、アキのこと利用しないでね」

「……ええ、分かっているわ」

「約束ね!じゃ、私たちはこれから友達ってことで!いいよね、アキ!」

「え?あ、ああ……」

真由希に言われるがまま、俺と彩葉は真由希に手を取られた。


「……私は、彼を利用したのだけれど。わかっているのかしら?」

「うん、それは許してないよ!でも、もうしないなら許します!」

何故、真由希にそんなことを決められなければならないのだろうと困惑し続けているのだが、それを口に出すと面倒なことになりそうなので、あえて黙っておくことにした。


「……燦斗くんは、私と友達でいいのかしら?」

「別に、友達としては嫌いじゃないしな」

「……そう。では、私たちはこれからは友達ということで」

「うん!よろしくね、彩葉ちゃん!」

「……ええ、高宮さん」

「彩葉ちゃんも、私のこと名前で呼んで欲しいなー?」

幼なじみが俺の偽元カノにもグイグイ来る。

こいつ無敵なのか?


「……分かったわ。真由希さん」

「さん付けはだめ!」

「……真由希」

「よろしい!」

まあ、何はともあれ、俺は彩葉のわがままにこれ以上付き合う必要はなさそうだ。

はあ、なんだか疲れたなあ。


そして、次の休み時間、事件は起こった。


「あ、あら、影山くん。なにかしら?」

珍しくモジモジする乙女な一面を見せる彩葉と、これまた珍しく影が濃ゆい影山くんが教室で向かい合っている。


クラスの面々はこの男子生徒は誰だ?とざわざわしている様子から、彼はこのクラスの生徒だということは誰も気づいてないことが伝わってくる。


「薬院さん、僕は君のことが好きだ!」

ざわつく教室。

彼らからすれば、知らない生徒が急に教室で薬院 彩葉に愛を叫んでいるのだから、無理もないだろう。


「僕と、付き合ってくれ!」

……彼は本当に影山くんなのだろうか。

俺と真由希は、開いた口が塞がらない。

それは彩葉も同じだった。


「か、影山くん……その……」

さあ、クラスの面々が見ている中で、彩葉はどう答える…?

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