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地球魔力改変  作者: しじみ
2章:ネイダー・アンカー
158/165

98.『資源の使い道』

 絢は自分のせいで起こるアクシデントに恐怖していた。

 自分の一つの失敗が大勢の命に関わる可能性に至っているがために力に貪欲で、未来を言葉にすることの代償を勘付いてしまった故に言外に意味を探す。



 “継承者”は短命だ。

 今代の継承者こそ“継承”から半年以上も生きているが、それ以前に限れば2週間程度が寿命だった。

 行動を起こす継承者ほど命は短く、静かな継承者ほど長命である傾向。そこから考えるまでもなく、未来を見通し道をつくることの代償は寿命であると考えられていた。

 しかし、それは結果でしかないのではと思うのだ。

 魂のあり方が理解できるようになった絢には、今代の継承者と共に時間を過ごすにつれて彼女の魂がすり減るように薄れていくように見えていた。


 思えば、継承者は代々先代の命を自ら手にかけることで続いてきた。

 それがどうにも、命を奪うことでしか自らの存在を存続できる気がしない絢自身と被るのだ。

 魂に結びつく力を繋ぐためか、次の代の魂を僅かでも守るためか、魔力というある種の力を少しでも受け渡すためか。

 彼らが何を考えて繋ぐのかを知らず、知るべきだとも思わない絢は、だからこそ言葉一つを味わおうとする。



 今回の任務は長い。

 来年度にまで跨ぐ期間を、まさか2つの別れだけで終わらせて良いはずがない。

 そう思うからこそ絢は、その時が来るまで羽を伸ばしつつ学びを得ようとするのだった。


 力を増すには新たに何かを得るよりも、今ある力を研ぎ澄ます方が現実的だ。

 与えられたものや存在状態に関する停滞気味なスキルは置いといて、特殊なスキルは《変態》と《浮遊》。

 魔力の活用技能系である《魔力操作》《強化》《物質化》《射撃》《魔力盾》《探知》。

 残りは武器の活用技能類であるから割愛。


 とにかくこれらをどうにかしてうまいこと使えるようにしなければならない。

 受け売りであるが、“変態”とは昆虫における段階的な形態変化や植物における環境適応への進化を指す。

 《変態》もできることとしては肉体構造や材質の変換なので、大きく外れてはいない。

 これは分離された肉体の回収。腕や足、時には肉体延長をした部位を柔らかい肉から骨などの硬質なものへと物質的に変えるなどして活用している。


 《浮遊》はその名の通り浮かび、大量の魔力を皮膚表層に持ってくることでそれなりの速度で飛行したり急激な方向転換が行える。

 実用的な速度にするには《人形》使用中では不可能と言って良いほどに、後者は絢の報酬魂器に内包されている圧倒的な魔力を用いる必要がある。なので現状はフヨフヨ、スイーっと移動するだけのスキルだ。

 更なる悩みの種として、沖縄戦以降で魂器を使っても“飛行”にあたる速度を出せずにいた。

 自分で浮かび飛べる原理すら理解できない今、個人的優先度が低いことと合わせて飛行訓練と言う名の浮遊体験会を増やす理由も見当たらなかった。


 他の魔力活用系技能はコツコツ魔力を使い続けるしかなく、長い目で見るしかないのに何をするにも必要な《魔力操作》。

 肉体や他物質に魔力を浸透・循環させることで強度や性質を高めるため、戦闘員としての生命線である《強化》。

 物質的ではない魔力という存在を物体として構築し、魔力で攻撃や防御をするために必須級な《物質化》。

 物質化した魔力をある程度緻密に操作することを条件に、万人に扱える遠距離攻撃となる《射撃》。

 物質化した魔力で飛来する攻撃の減衰・無力化が望めるため、遠距離攻撃の対策として重要な《魔力盾》。

 空気中に放散させた魔力を制御下に置き、範囲内の情報を取得することで潜伏対策や交叉路(こうさろ)での事故を減らせる《探知》。

 得意順で《強化》《物質化》に《魔力操作》。他の3種はできることはできるが欠陥あり、といったところだ。

 《飛刃》? そんな子は知りません。


 とにかく、この3種を人に似た体を構築する《人形》使用状態の魔力量で使える程度にする。ついでに連携を学ぶ。あわよくば《浮遊》の謎を解き明かす!

 それがこの任務期間のサブ目標である。



 学校組の学生たちは《射撃》を使わないものの、矢や投石が逸れる魔法を持っている透以外は全員が当然のように《魔力盾》を扱う。

 それによって遠距離攻撃が無力化されているので、今回の探索は想像以上に楽だった。


 そもそも絢のところまで攻撃が飛んでくることは無く、戦闘では《変態》で変形・骨化した左手に高強度の《強化》がされたことで並の金属であれば切り裂ける程度になったそれと、魔力と融合した金属である魔鉄の短剣にやっぱり高強度の《強化》がされているそれの擬似二刀を振っていた。

 左手を万が一にも負傷させないコツは外側に物質化のコーティングをかけることだ。


 他にも四肢に《強化》を入れていれば魔力はカツカツ。正直武器方面への魔力が過剰であるのだが、本人はそれをよしとする。

 攻撃が通らなければ動きが止まってしまう、単純に連続戦闘の継続が見込める方が好みなのである。

 そんな遊びをしながらも、絢は過去に類を見ないほどに活き活きとしていた。


 この場には本来数も少なく、強さゆえに敬遠される残骸種がゴロゴロと存在する。

 そんな残骸種には思考が見られることで有名だが、絢の中では別の部分で株が大上がりしていた。それこそが魂の有無である。

 人とは違った魂の感触。されど魂は魂。それに気がついた瞬間に、この階層は絢の新たな実験場となることが確定した。

 人にはし難い命を弄ぶかのような実験。正直気にはなっていた魂の採集・分割・裁断・比較・対照・吸収と、肉体を破壊することが前提の検証が山積みだ。



 とはいえ、それは今するべきことではない。

 人間性を下げていなければ膝をつくこと間違いなしの長時間戦闘に撤退の指示が入るまで真剣に戦い、帰り道に一般的な魔法についての説明を(とおる)から受けながら地上へと戻る。

 なぜに透からかというと、雑談で彼の動きを模範にしていたと絢が口にしたことが理由で仲が良くなったからだ。


 透が言うには魔法は大きく分けて二つの部分に分けられる。

 一つ目は最下層に降りる前に各々がしていた準備の段階——『詠唱』。これをすることで、魔法を“待機状態”にできるのだと言う。

 二つ目は奇跡の名前を呼ぶ魔法の発動段階——『名唱』。この二つを順に唱えることで魔法はようやく姿を現す。


「でもさ〜、詠唱段階でも魔力をある程度持ってかれちゃうから、なくなってくるとどのタイミングで詠唱するか悩むんだよね〜」


 透は魔法を持つ人特有の悩みを打ち明けるも、絢にはいまいち分からない。


「でも魔法があるってだけで便利そうでいいなって思うよ? それに透くんのは詠唱も短いし」


「そういう絢も進化してるんならフェフはあるはずでしょ? 使い方に迷ってる感じ?」


「わたしは色々あってもう形にできる分は残ってないからしばらくは無理そうかなって思ってる」


 一次進化後から《交換》に新たな機能が追加され、同時に確認できるようになる『フェフ』という数値は技能や魔法に変換することができる。

 しかし、絢には二次進化の直後に完全な自己確立のためにも、大半のフェフを洵に渡してるためそれが極端に少なかった。


「——けどそんなことはどうでもいいの! 詠唱が長い人と短い人の違いってやっぱり魔法の出力なのかな? 真尋さんの見てたら思うけど、透くんのは短いのに結構強そうだしどうなんだろ?」


「オレのは自分のスタイルに合って使い勝手が良いのが欲しいって思ったから短いってのはあるんじゃないかな? あと単純にそんなレアな属性じゃないからね」


「んー。願いに応えてくれるなんて都合よくて気味悪いなって思うけど、よく考えたら《交換》からそうだったかも? 真尋さんの魔法はどんな属性か伺ってもよろしいですか?」


 志道は火。透は風。見た目ですぐに分かるものがあれば、分からないものもある。その謎枠が真尋だった。

 「あたしにも敬語はいらなねぇよ」と前置きされ、「予想はなんだ」と質問を返された絢は悩む。


 魔法名はシントウ。特別な点として名唱の前に必ず副武器として短めの木製棒を手に握る。名唱後に棒で殴るとそれも砕ける。

 詠唱時間も割りかし長いのに加えて志道の《纏炎》と違い持続もしないので使いやすそうとは言えないが、目立った外傷なしに敵は死ぬ。


「ポイントは『害悪を飼い慣らし』ってとこかな。っても詠唱なんてわざわざ聞かねぇよな」


 そこまで言うと真尋は思案するように目線を斜め上に向けると結衣に問う。


「そういや絢はまだ私のスキル知らないんだっけ?」


「多分言ってなかったはずー」


 後方からの返答に頷くと「じゃ、帰ってから教えてやるよ」と、ニヤッと笑いながら応えが返される。

 すかさず「楽しみにしてますね!」と伝えるとひらひらと手が振られ返された。


「透くんは知ってますか?」


「そりゃね、付き合い長いし知ってるよ。ただ一言だけ言うならスキルは良いことだけじゃないってことかな〜」


「おい透〜。ネタバラシはほどほどにな?」


 少し重そうな内容を当然のように言う透とそれ以上の言葉を止めさせる真尋。

 デメリット付きの技能というヒントに『害悪を飼い慣らし凶刃を授けん』という末文の記憶からは共通した性質があるということしか分からなかった。


「え、こんぐらい良いじゃないすっか!?」


「お前の場合は調子に乗って答え言っちゃうだろ!」


「うす、すんませ〜ん。でもなんでわざわざ後でなんすか?」


「そりゃあ——ちょっと話したいことがあってな」


「え……お手柔らかにお願いします」


 軽口の応酬と思っていれば突然矛先が向けられた絢は、ただつまらないを反応するできなかった。



 残骸種との戦いによって血みどろな合同部隊が地上に出れば、そこには華凛が待っていた。

 学校組が自由に使えるシャワーハウスで身を清め、外に出ると甲斐甲斐しく志道に飲み物を渡したり荷物を持ったりする華凛の姿。


「今日のお茶も美味しいわ。ジャスミン?」


「分かりますか? お口に合ったようでなによりです!」


「いつも悪いな」


「いえ、好きでしているだけですから」


 花が咲くような笑顔、幸せ全開の雰囲気。

 わたしは何を見ているのだろうか? これが昨日壮真(そうま)に毒を吐いてた人の姿か?

 絢が混乱する横で、合同部隊のメンバーの最後の一人が男子用シャワーハウスから姿を現す。


「うい〜。さっぱり〜! 遅くなったわ〜」


「遅い。自覚があるのなら時短する意識を持ったら?」


「頭から血ぃ被っちったんだよ! 悪かったな!」


「未熟ね」


 なんだろう、この温度差。確かに壮真はいい意味で壁がないけど対応が極端すぎて風邪ひきそう。


「揃ったな。帰るか」


 平常運転の直弥が学校までの移動を指示して移動が再開される。

 取り残される訳ではないが、言われっぱなしの壮真が少し哀れに思えた。


「そんな顔で俺を見るなよ! 虚しくなるじゃねぇか!」


「壮真のこと、わたしは優しくしてあげますね」


「いらねぇよ! てかなんで俺は呼び捨て!」


「それは……空気感?」


 合同部隊では一番の格下だからだろうか? 侮って良い気がしてしまう。


「そこの透よりは上なんだけどな!?」


「透くんは実力で上、すごい活躍してましたから。そーまは影薄かったですね」


「お、喧嘩売ってんのか? そんなこと言っていいのか? 泣くぞ!?」


「生意気言ってすみません。お願いなので泣かないでください」


「俺の扱いはガキか!?」


 なるほど、テキトウな会話が無条件で許されるように錯覚している。一理ある気もするがこの辺でしっかりしておこう。


「そういう訳では……陽翔さんの相方役を貸していただいてありがとうございました。おかげさまで快適に学ぶことができました」


「いきなりソッチに戻るのな!? そんなにちっちぇえのに戦ってるだけですげぇんだからさ、戦わないってのをしないんならせめてのびのび戦えって〜」


「……そーまはいい人ですね」


「俺が!? じゃあ他の奴らは聖人だな!」


 いちいち茶化そうとする壮真は、チームを支えるサポーターの役割を担っている。

 使える魔法は火と水の2属性あるものの、それに攻撃性能は含まれない。

 防御性能も妨害性能も持ち得ない魔法に貴重なフェフを投じ、裏からチームを生かすことを選択した彼の経験に興味を持った。


 きっと彼には結衣のような特別な事情はない。それが正しいのであれば、そのポジションに満足している理由はなんだろうか?

 もしかすると彼は“行動した先の後悔”を知っているからなのかもしれない。そうでなくとも、どこまでも優しい人であることは疑いようがなかった。

 目標を定め区切らなければ失ったことすら気づけぬ時間と、目には見えても命懸けで取りに行くしかないフェフ。この資源の使い道が行く末を大きく変えることでしょう。


 魂生として安定してきたがために魂を感知しだしました。それにより絢のマッドサイエンティスト(?)な側面がうずめき出しました。一応慎重さはありそうなので見られないように一人で発散してどうぞ。


 今回はちょい真尋と壮真掘り起こし回です。フェフについてももう少しほらねば。

 壮真への推察の前半はおそらく間違い、多分めちゃシンプルな考えを持ってます。


 『やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい』このマインド以前に、絢は思いつきで一人を亡くならせました。やった先には取り返しのつかない失敗があることを知った。

 ここから考えるに洵の改造は失敗が見えないほど成功は確実であると確信しているかもしれません。


◇予告

 身体的な限界。その現実に突き放された少女の両腕はただ一人を抱き留めるだけに使われる。壊れてしまった彼女を外敵から守り抜くために。

 陽光の遮られる世界だからこそ、人の光は一層強まるのか? 次回——親鳥を気取る幼鳥。また来週!



 予告書くの意外と重いかもって今更思いました。ノリで始めたのでちょっとした心変わりで消えると思います。

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― 新着の感想 ―
絢くん経歴が経歴すぎてマッドの素質ありますよねーまぁ成果に繋がるなら人間でもヨシ!人間じゃなければなおヨシ!みたいなノリで成果でれば問題ない世界だからある意味正気でもある。
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