秋祭り
魔は闇より生まれ、世を蝕む。
穢れに染まりし巨躯の獣。その身は黒く、牙は岩を砕き、爪は大樹を裂いた。
その飢えは尽きることなく、獣を喰らい、人を喰らい、村を喰らう。
夜が更ければ山より降り、朝になれば影へと消える。
その瞳は闇の中でぎらりと輝き、幼子はその光を見るだけで泣き、大人でさえ名を口にすることを恐れた。
人々は嘆き、祈りを捧げた。
その声を聞いた神ウォリケは、神グロードを呼び寄せる。
「この地を耕せ。」
そう言って、天より授けたる稲妻をその手に与えた。
グロード神は大いなる戦槌を肩に担ぐと、大地へ降り立った。
一振りすれば雷鳴が轟き、二振りすれば黒雲が裂け、三振りすれば魔族は灰となって風に散った。
神は魔を討つたびに、その大槌で荒れ果てた大地を打ち均した。
魔の血に穢れた土は清められ、稲妻の走った跡からは柔らかな芽が顔を出した。
やがて空は澄み渡り、冷たい雨は恵みとなって降り注ぐ。
草木は青々と茂り、黄金の穂は風に揺れ、小鳥は再び歌を取り戻した。
人々は知った。
神が魔を討ったのではない。
神は荒れた大地を耕したのだ。
ゆえに秋、実りを迎えるたび、人々は初穂や果実、酒を携えてグロード神へと捧げる。
それは稲妻が再び大地を清め、来る年も豊かな実りが続くことを願う祭り。
これこそが、秋祭りの始まりである。




