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土姫、あるいは岩姫さま
彼女の髪はゆるゆると波打ち、春が来た乙女のような薄紅の髪であった。
そしてその品のある容姿が赤き花に似ていた為、娘の名前はグロムであった。
けれど彼女は『岩』に似たその名前をあまり気に入っていなかった。
もし、ふざけて『土姫』などと呼べばたちまち魔女は恐ろしい稲妻をよび、あたり一面を火の海に変えてしまうだろう。
そんな恐ろしい力を持った美しい岩姫様の噂はすぐに広まり、色んな見物人がやってきた。
けれども誰もが返り討ちにあい、強引に立ち入ったものは二度と出てくることはなかった。
それもそのはず、彼女は泉を守る巫女であり、王の命令で侵入者を全員殺すようにと言いつけられているのだ。
そして王も、娘が誰の手にも渡らぬように深い深い岩場の奥に隠していた。
いつしか誰も寄り付かなくなったその場所で姫は一人、泉の番をするのが常になっていた。
彼女は父王が死んだあともずっとそこにいた。誰かを待つように、厳しく結ばれた唇を開く相手を待つように。
父王は死ぬ前に娘の心を射止めたものに跡を継がせると残したものだから、誰もが彼女を手に入れようと躍起になった。そのせいもあって彼女はもっと厳しく口を閉ざした。
川の流れが枯れて、多くの者が去ったあとも彼女は残り続けた。王を信じて残り続けた。




