災厄の訪れ
それが現れたのはあまりにも突然で一瞬、世界が眠りについてしまったかのようであった。
オドアの上の方が黒く染まり、か細い瞬きが世界を占める。
マヴィナとソルスラの輝きが無ければ人々は恐怖の余りにすくんでしまっていただろうか。
蛇たちはオドアの下の方に潜ってしまったのかと混乱したが、すぐに何があったか理解した。
鷹のヴィトアが上の方に巨大な生き物がいると叫んでいた気がする。
たまにあの老いた鳥は不思議な事を言うし、戦を止めるための嘘だと誰に気にしてなかった。
だから、本当にあんな生き物がいたとは思いもしなかった。
黒い天井から闇の中でもハッキリ見える影が落ちてくる。
それは、バサバサと羽ばたき、けたたましい声をあげながら無数の塊となって縦横無尽に飛んでいった。
それから大きな影の口が降ってきたかと思うと、目につくもの全てを飲み込んでしまう。
マヴィナとソルスラが慌てて凍らせ焼き払ったが、次々と溢れてくる影に誰しもが慌てふためいた。
今までの戦など当に忘れて、大口の化け物に蛇が巻きつき、槍やら何やらで隙間を刺し、殺した。
鷹が起こす風で上を飛ぶ影を祓った。
だが一番上の大きな闇は未だそこにあってその日からそれが空となり、その体に輝く灯りは星と呼ばれた。
大口の化け物に攫われたものはその腹に収められ、空へと送られる。
そうしてまた新たな大口の化け物がやってきては、生き物を襲うの繰り返しが始まった。
今まで憎み合ってた者同士でも、新しい未知なる恐怖の前では互いに潜み合い、物陰に隠れてじっとするばかりだ。
突然現れたノフスにオドアは激しく抵抗したせいで、また背中はぐちゃぐちゃになった。
それで影の化け物の大半はいなくなったが、生き物たちの被害も大きい。
壊れた世界でようやく自分たちの過ちに人は気づいたが、そのときは既に何もかもが遅かった。
一方、マヴィナはどうにかこの機会を使ってソルスラを殺す事を望んでおり。
ソルスラはソルスラでこの機械にマヴィナを亡き者にしたかった。
オドアが暴れたおかげでノフスの表面は漣が立ち、その波からオドアの子供と同じしなやかな体の黒い鱗を持った蛇が生まれた。
彼の目も舌も全てがノフスのように黒く、残酷さも兼ね備えていたがオドアと同じ姿だったので母を慕う子どもであった。
マヴィナとソルスラはお互いに様子を伺いながらもノフスを討つべく協力する様子を見せていたが、その心のうちはアディムに筒抜けであり、鷹のヴィトアにもわかっていた。
ヴィトアは誠実で、小賢しいロンル(ここでは生まれた黒蛇を意味する)とは仲が悪かったが今はそんな場面ではないと、マヴィナとソルスラの仲を取り持つことを率先していた。
ノフスから見ても足並みの揃わない、地上の様子はとても愉快だったに違いない。




