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銀の大地ー神話・伝承群ー  作者: すけろくこぞう
ロンラディム神話
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19/39

鷹の背

 それもまた固い泡から生まれたモノであった。生まれてすぐに飛び立ち色々な物を見てきた物知りであり。その背中には旅の出会いが道連れになって、麗しき双翼は活気に満ちていた。


 あるとき鷹は一休みする場所を探していた。そうすると目の前に大きな枝が見えたので止まってみようと近づくと、その表面がザザと舞って鷹の背中に降ったのでその背中は砂嵐にあったかのようにメチャクチャであった。けれどよく見やれば砂には金やら銀やら様々な宝石に混じって、美味しそうな木の実まで混じっていたのだった。


 これには背中の住人たちも大喜び。


 鷹は文字通り舞い上がって、二度三度辺りを滅茶苦茶にした。

 するとそれまでは気が付かなかったが、その近くに小さい生き物たちがいるではないか。

 あまりにもか細い声で気がつかなかったがどうやら此処は彼らの家があったらしい。


 悪いことをしたと鷹は頭を下げると代わりに、その背に生える短い羽を一枚譲り渡した。

 それは小さな風を起こす魔法の羽で上手く使えば空を飛べた。

 渋々許した小さな生き物はそれを背中に刺すと、意気揚々と空に舞い上がって鳥となった。

 自慢の羽はあの鷹のものなんだといつも見せびらかすように飛んでいる。

 空を飛ぶのがあんまり好きなものだから隼という名前になった。


 砂遊びをもっとしたかった鷹は仲間たちの要望もあって場所を変えてもう一度、大地を掠めてみた。


 すると次は土に混じって細長い生き物が眉間に落ちてきたではないか。

 慌てて頭を振ると、その生き物は簡単に下に落ちてしまった。

 幸い、鷹の胸元に落ちたため死ななかったがシャーシャーとなにか文句を言っていた。


 ゆっくりゆっくり慎重に彼を下ろすと鷹は、彼が何者なのか理解した。

 虫のようで虫でない、うねる生き物の名前は蛇。

 蛇はその牙を見せつけながら睨みつけている。


 鷹はお詫びにとまた羽を差し出そうとしたが蛇はそれを断った。

 どうやらここは大きな誰かの背中だったらしい。

 そこで好き放題暴れている鷹に皆、怒り心頭らしい。


 鷹は急いで詫びると事情を説明した。

 悪気はなかったことと、金輪際このようなことはしないと。

 それから鷹が今まで集めてきたとっておきのお宝を数個手渡してどうにか許して貰ったのだ。

 正直なところ、蛇たちには無用の代物であった。

 だが怖そうな鷲が、ずっと小さい生き物に慌てふためき、申し訳なさそうに表情を変えるのを見て毒気を抜かれてしまったのである。



 鷹はホッと息をついて、この背中の持ち主の名を尋ねたが誰も本当のところは知らなかった。鷹もそうであるようにこの大地もずっと昔に生まれ、永きを生きているようだった。鷹は再び空高く舞い上がる、次はもっと優しく丁寧に。


 それでも衝撃は凄まじかったが先ほどより優しかった。そのとき初めて風というものの素晴らしさを知ったのは言うまでもない。


 花粉が飛んで、他の花に舞い降りた。そしてそれが実になったのだ。

 今までは木が頑張って体を揺すっていたのにこんなに簡単に済んでしまった。

 驚きの声が届く前に鷹は高く、次は頭を目指してその翼を羽ばたかせた。


 どれだけ飛んだだろうか、それすらわからないくらいの巨体であった。彼女の頭は下に伏したままで眠っているかのようだ。けれどもその宝石のような目が真っすぐにこちらを見ているので起きているのだと鷹は気づいた。


 彼女は鷹と違って寡黙なようで奥ゆかしく、ゆったりとした所作で少し頭を起こした。その揺れは少しだけ響いたが、その背中の生き物には影響がない。



 鷹はその迫力に、どんなお叱りを受けても仕方がないと息を飲み込んだ。


 しかし予想外にも彼女は静かに頭を下げると、鷹に感謝の言葉を告げた。それは一体どうしてと鷹は狼狽えてしまう。まさか礼を言われるとは思っていなかったのだ。


 聞けば彼女は背中が痒いのをずっと我慢していたらしい。

 そこに鷹が思い切り舞い降りたから、とてもスッキリしたと。

 鷹のお詫びの言葉もしっかり聞いていた彼女は、悪気はないことも知っていたし、小さい生き物に気付いたあとは慎重に飛んでいたことも知っていた。


 どうしてもお詫びがしたいなら風が気に入ったみたいだから、たまに風を起こしてくれ、そしてときおり背中を掻いておくれと鷹は頼まれる。


 鷹としては断る理由もない。

 それに新しい友人に心を躍らせていたから、友好の印として年若い息子に風を起こさせることにした。


 彼女と小さな生き物たちはこれに大喜びして、彼とその仲間たちを歓迎した。


 それからはときおり背中を掻いたり、彼女と話をしたり、または高くから小さな生き物を見ていたり、大地の上を楽しそうにクルクルと回るのだった。

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