王の終わり
泉から生まれた子どもは闇を纏い、不確かな命を持つ曖昧な存在であった。
その姿は水面に映ったように揺らめき、アルスのような形であったり、四つ足の生き物でもあった。
そんな最初の存在を伴侶として迎えたのはディムであり、アディムと呼ばれた。
その子は闇のような暗い紫の髪と瞳に黒い鱗を持った。
アディムの兄弟や、その子供の子も同じようにノフスの子と混じったが、皆一様に紫の毛と瞳でその誰もが強い闇の力を有していた。
ときおりその目に黄色い光を讃える者がいた。
それは決まってロンル・アディムであり、他の子どもはその光を見るたびに天の愛を感じ、また自分たちも報いる気になったのだった。
そうして暫く平和に暮らしていたが、世代を経るごとに彼らの故郷は遠く感じられ、次第に忘れられていった。
そして王の民、アルスウィダと名乗るようになった彼らとアドゥナが生まれる。
その目は黄金を宿して星のように瞬いていたが、それは紛れもなくシェラの星であった。
シェラの言葉は遥か遠くまで渡り、密やかな秘密までも孕む。
たちまち民の心は泉へと向き、その一言一句を深く胸に刻んだ。
今まで黙っていたシェラが唐突に表に立ち、それが気持ち良くなかったアルスはアドゥナを追いやると、ついでにロンルたちも追いやってしまった。
ノフスの巫子もまた不可思議な予言や、遥か遠くまで見やり、アルスの立場を危うくしたからである。
その日からシェラはアルスに力を貸すことが嫌になり、王の民も不信を募らせるようになっていった。
それから間も無く、次は銀の目のエイシュが生まれ。
彼女の息子たちは泉を独占し横暴に振る舞うアルスを許しはしなかった。
かくしてアルスは討たれ、王の時代は終わるのである。




