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第8話 マリエッタ、それでいいの?(共犯成立)

「そう、そういう事ね」


「はい……」


俯く男爵令嬢。

バラ園が見渡せる中庭。

二人で人目に付きにくい隅のベンチに座っていた。

男爵令嬢の名前はマリエッタ・フォン・ノルマン。

良かった。

これで男爵令嬢呼びは避けられる。


「芋なんて見飽きました」 


マリエッタの切実な声。


「できるなら、私だって毎日パンが食べたいです」


うん。

分かる。

私だって、毎日、酒飲んで猫を構い倒したい。

それが、人生ってものよ。


「はっきりというけど、いまのままだと無理よ」


指摘は大事。

自分から行動しないとチャンスは巡ってこない。

どう動くかで、人は変わってくる。

伸びるか、伸びないか。

マリエッタ、あなたはどうするの?


「わかっています。けど、諦めたくないです」


顔を上げたマリエッタは、私の目をみてはっきりと告げる。

うん。

顔を見て、自分の意見をいう。

正解。

やはり、最初に私の見込んだどおりだ。

いい。

根性がある。

押し付けるには、最適だわ。

私は腹の中でニヤリと笑った。




なぜ、私はリザベッタ様と話しているんだろう。

私の計画を潰した人間なのに。

しかも、家の事情まで語ってしまうなんて……

きっと、仕事を教えてくれる教育係(シスター)のような雰囲気のせい?

私はリザベッタ様を伺い見た。

輝くような金髪に海のように青い瞳、桜色唇。透き通るような白い肌はシミ一つない。

物腰は優雅で、けど、凛としている。

並みいるライバルを蹴落とし、王太子殿下を惹きつけた。

厳しくも筋がとおっている指摘。

ライバルだった私にも親身になってくれるし……

完璧な淑女(レディ)

王太子殿下に選ばれないわけないよね。

でも、パンは諦めたくない。

……!

リザベッタ様は、絶対に王太子殿下に選ばれる。

王太子妃になり、将来は王妃様になる人だ。

女の第六感がそう告げている。

なら、リザベッタ様付きの女官になるればいいんじゃない?

王族の付き人、きっとお給金はいいはず。

両親も私も毎日、パンを食べ放題。

見込み薄な婚約者より余程、確実よね。

リザベッタ様は無理難題を言いそうにないし、仕えやすい人だ。

このチャンスを逃したら、一生、芋生活決定よ。

後悔してもしきれないわ。

芋より白くふかふかなパン!


「リザベッタ様、協力させてください」





どう話を切り出そうかと考えていた矢先に、マリエッタから協力の申し出があった。

えっ?

なんで?

いいの?

滅茶苦茶窮屈な生活が待っているんだけど?


「あなた、それでいいの?」


確認は大事。


「はい」


「後悔しない?」


ダブルチェックは基本。


「決めましたから、私」


マリエッタの力強い返事。

そう。

いいんだ。

……変わっているな。

まぁ、本人がいいといっているんだ。

心置きなく、押し付けよう。

なけなしの罪悪感が薄れた。


「ありがとう」


「何でも言ってくださいませ。私、力になります」


両手をギュッと胸の前で合わせて、食いつくようにいう。

お、おう。

やる気、大事。


「頼りにしてるわ、マリエッタ様」


「様は不要です。呼び捨てで」


確かに。

これから嫌がらせをして、王太子殿下のマリエッタへの好感度を上げていくんだから”様”付はないな。

既に私と自分の立ち位置をきちんと理解している。

凄いわ、マリエッタ。


「厳しいこと言うわよ?本気でいくから」


「望むところです」


覚悟はできているのか。

見上げた根性だな。

けど、こういう子は好きだ。

指導のし甲斐がある。

生贄じゃない、協力者も得た。

よし、プロジェクト立ち上げだ。

先ずは、立ち位置の確認して、今後の進捗。

忘れてはいけない、Plan、Do、Check、Action。

基本を回すだけよ。

ああ、私の自由…

酒と猫の日々よ。

待ってて……












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