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第6話 悪役令嬢、男爵令嬢を追いかける

学園に登校すると、私を取り巻く空気が違った。

みなさん、情報の収集が早すぎないか?

名前呼びの許可が下りたのは昨日のことだというのにもう知っているのか。

個人情報保護について、みっちりと話し合いたい。

全員集めて個人情報の漏洩は厳禁だと説教したい。


「ごきげんよう…」


(朝は、”おはようございます”だろう)


慣れない言葉使いにイラっとするが顔には出さない。

教室の入り口で挨拶をする。


「あっ、ごきげんよう」


挨拶を返される。

挨拶は社会人としての基本のキ。

よし。

席に着き、男爵令嬢を探す。

いない。

もう猶予は無くなったと思っていいだろう。

早急に手配をしなければ、間に合わない。

私はじりじりしながら男爵令嬢を待った。

20分前……15分前……10分前……

始業10分前だというのに来ていないだと?

なめてるのか?

何事も10分前集合は礼儀だろうが。

男爵令嬢が教室に現れたのは授業開始5分前。

そのころには教師が来ていて、声をかけることもできない。

教師より後に来るとは何事だ。

これは指導項目だな。

……ダメだ。

封印、封印。

お局気質は封印しなければ。

仕方なく、授業が終わるのを待った。

次は理科室への移動だったな。

移動時に捕まえて、話のきっかけをつくらなければ。

授業終了の鐘が鳴った。

椅子をがたがたといわせて、生徒たちが席を立つ。

すぐに私も席を立った。

男爵令嬢を追いかける。

えっ、いない?

どこに行ったの…

男爵令嬢は既に理科室にいた。

近くに座ろうにも席が空いていない。

くっ。

お昼休みにかけよう。



……なぜ?

学食。

遠くの席に男爵令嬢が見える。

私の周りには王太子殿下、レオナード御一行様。

食事にきらびやかさは邪魔だ。


「リザベッタ、デザートは?」


王太子殿下が柔らかな声で問うてくる。

……は?

名前呼びだと?

敬称はどうした、王太子殿下。

近くの学生たちは聞き耳を立て、目で合図をしている。

暇なのか、お前たち。


「いえ。不要です」


「なぜ?」


「腹八分目。健康の基本です」


「そうか…自己を律するか…」


不必要な糖は集中力の低下を招くだけなく、糖尿病を引き起こす。

成人病になりたくないだけだ。


「リザベッタ、あれから大事ないか?」


「ええ」


あれは久しぶりの猫に興奮しただけだ。

周囲がザワリとする。


「あのような姿を見たのは、きっと私だけだろうな」


そうそう鼻血を出して倒れてたら問題だ。

ヤバい人間だと思われる。


「このような場でいうべきことではないかと」


「殿下、リザベッタ嬢の言うとおりです」


アランが止めに入る。

まったくだ。


「そうだな。ああ、リザベッタ、また来るように。待っている」


アルちゃんに会えると?


「よろこんで」


弾んだ声で返事をして気が付いた。

親密さをアピールしてどうする、私。

こちらを伺う男爵令嬢の視線が痛い。

マズい。

このままでは誤認案件だ。

迅速に対応しなければ、クレームに発展する。


「席を外します。失礼」


食べ終えたトレーを持ち、席を立つ。

「ごちそうさまでした」と言って、返却口にトレーを下げる。

先ほどまで座っていたところに目をやった。

が、友人らしき令嬢たちはいたが、肝心の男爵令嬢がいない。

どこよ、どこに行った。

食堂の隅々まで見渡した。

いた!

食堂を出ていく男爵令嬢の後ろ姿を発見した。

追いかけようとする私の前に数人の見知らぬ学生が立ちはだかる。

邪魔だ。


「リザベッタ様、お茶をご一緒しましょう」


「よろしいでしょう、リザベッタ様」


「ご一緒してくださいますわよね。さあ、あちらへ」


馴れ馴れしい。

しかも強引。

相手の状況も立場も考えずに、さも当然といったような態度

これは指導案件だ。

指導案件なのだが、ここで指導していては男爵令嬢を逃がしてしまう。

くっ、涙を呑んで諦めるか……

一人の令嬢が私の腕を掴もうと手を伸ばす…

ぷちっ。


「私が行く前提で一方的に話されているのは、マナー違反ですよ」


令嬢たち一人一人と目を合わす。

相手と目を合わし、指導するのは基本だ。


「誘うのであれば、先ずは、都合をきくべきでしょう。大体、あなた方は自己紹介されてません。そのような人についていくとおもいますか?」


結局、指導してしまった……

茫然とする令嬢たちを置き去りにする。

私は迷惑にならないように気を付けながら、足早に男爵令嬢を追った。

どこに行った……

いた!

階段の下。

男爵令嬢もこちらを見て、私に気が付いた。

一瞬、顔を引きつらせた男爵令嬢。

私が近づこうと足を踏み出すと、男爵令嬢がさっと踵を返す。

えっ、なんで?

ちょっと待って。


















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